放課後

 葬式の日からさらに何日も過ぎた。やっぱり雨が続いている。最近は下校の時間に誰かと帰る元気もなくなってきた。雨が続けば頭痛がする。それが原因だろう。私の元気を雲が吸い取っているようだった。しかし、今日は午後から雨がやみ、一日中曇り空だった。早く下校した友人たちは、傘を差さないことを喜び、帰りに寄り道をしていくようだ。私はというと、一緒に帰るのが億劫になってきたので、勉強があると嘘をつき、勉強していくことにした。二時間も放課後に勉強すれば、友人たちに帰り道ですれ違うこともないだろう。まあ、ペンを持つ元気もないのだが。

 何をやるにもやる気が出ないので、自分の席に座って外を眺めることにした。最近にしては珍しい夕焼けの空は、痛いくらいに目に染みた。久しぶりに空を見た気がする。学校に来たら勉強、勉強で特に考えなくてもよい。その分、放課後になるとどっと何かがやってくる。いつまで続くのだろう。雨が増していくように、一人で涙を流す日が増え、学校へ向かう足がどんどん重くなっていく。壊れかけのシャープペンシルですら持つ力がなくなってしまった。ただひたすらに夕焼けをみる。ブラックジャックの話の中で、失明し、一時的に視力を取り戻した女性が最後に見た夕焼けはどんな色だったんだろう、とかをひたすら考えている。疲れたってこういうことだと思う。

 「何してんの。」

 突然声をかけられる。担任の声だった。

 「いやぁ、疲れたんでぼーっとしてましたぁ。」

ははっと笑って片付けの準備をする。先生が見回りに来たということは完全下校時刻が迫っているということだろう。ガタガタと荷物を入れる私を見ていた先生がふと聞いてきた。

「大丈夫か?」

と。

 急に何ですか、全然元気ですよ、と言いたかった。不意打ちで聞かれた質問に軽々と答えられるようなメンタルではなかった。

「はは、はい。大丈夫です。さようなら。」

逃げるように教室を出た。外は再び雨が降りだしていた。傘は持っていたけれど、差さずに帰ることにした。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

人殺しになりたかった るい @mokemoke_12keko

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る