算数

Lie街

たかし君は150円のジュースを買いました

たかし君は孤児でした。たかし君は身よりもなければ身内もいませんでした。いつも、ゴミ箱を漁ったりお店のものを盗んだりしてその日暮らしの生活をしていました。

その日もたかし君はコンビニエンスストアに入っておにぎりを一つ握りしめ、店員の隙をついて店を抜け出そうとした時、一人の少年が目の前に現れました。


「やめなよ」


少年は青と白のシマシマのTシャツに、青い半パンを履いていました。

少年はたかし君の手からおにぎりを取り上げると、レジの方向に歩いていきました。


「あ、ちょ、お前!」


たかし君は焦りました。店員に万引きの事を言われると思ったからです。

しかし、少年はおにぎりを店員の目の前に出すと151円を手渡しました。


「あっした〜」


たかし君と少年はコンビニから出ました。少年はたかし君におにぎりを手渡すと微笑みました。


「名前は?」


「……、たかし」


たかし君はおにぎりを頬張りながら、無愛想に答えました。

コンビニの広い駐車場には車が2台止まっていました。どちらにも人が乗っていました。眠っていました。太陽が真上に昇っていてギラギラと二人を照らしていました。

走り去る車の全てが縁石に座る二人のことを見ているような気がしました。


「たかし君はさ、いつからそんな暮らしをしているの?」


たかし君は少年の顔を見ました。その瞳には海のように透き通った好奇心が宿っていました。


「5年前。お前こそ、こんなところでこんな奴のことたすけて、何してたんだよ」


「別に、散歩が好きなんだ。それだけ」


少年の言葉に疑う余地はなかったし、そんな必要はどこにもありませんでした。

ヴォクシーが重低音を響かせながらゆっくりと通り過ぎて行きました。


「あ、そろそろ帰らなきゃ」


「お、おい」


少年のこのマイペースさはどこか憎めなかった。


「また明日」


「お……おう」


たかし君は何も言えないまま手を振った。たかし君の初めての友達でした。



数年後。たかし君と少年は一番の親友になっていました。少年の名はゆずるでした。たかし君は孤児院に引き取られて二十歳までそこで育ちました。初めに孤児院への入院を提案をしたのはゆずるでした。

ゆずるの他の友達も孤児院へ入っていたことがあったのでした。


「ゆずる、何か心配事があればいつでも相談しろよ!」


たかし君は少し小さくなったゆずるにそう声をかけました。


「ま、まぁね。今のとこどうにかやってるよ」


たかし君はフリーターをしていましたが、ゆずるは某企業に務めていて二人が会う時間も少なくなってしまいました。

その日は居酒屋に行って、二人はお酒を飲んで帰りました。ゆずるはあまりお酒が得意ではなく、最初の一杯以外はずっとコーラを飲んでいました。


それから、1週間後。ゆずるは交通事故にあって死にました。

ゆずるは飲酒運転をするようなやつじゃなかったし、そもそも酒があまり好きではなかったのできっと、上司か誰かに無理やり飲まされたのだとたかし君は考えました。

たかし君はゆずるの勤めていた会社に問い詰めに行きましたが、まるで相手にしてもらえませんでした。

たかし君は悔しくて泣きました。

たかし君は自動販売機で150円のコーラを買い、ゆずるが事故をしてぶつかったガードレールの傍に、コーラと花束を置いてやった。



Q.たかし君がゆずるに出来ることは何かありましたか?

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算数 Lie街 @keionrenmaro

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