お店の顔

バブみ道日丿宮組

お題:信用のない表情 制限時間:15分

お店の顔

「1人1個までですから」

 もう何度目になるだろうか。同じ言葉を作るのがだんだんと嫌になってくる。だいたい何で複数買うんだ? 

 ティッシュペーパー2箱はまだわかる。トイレットペーパー5箱はどうだろうか? マスク30箱はどうだろうか? 異常しかない。この国には異常人以外いないのか?

 そんな気さえしてくるほどに、客は異色。

「いっぱいあるじゃない! ならいいわよね!」

 客から返ってくるのも同じ言葉。

 そしてやることは同じこと。

「よくないですね。なら、警察呼びますね」

 客は目を大きくすると引き下がってく。誰も逮捕はされたくはない。

 だが、これで引き下がる客もいないのはアタリマエのことで、

「はやく会計して!」

 隣のレジでは横暴が押し寄せてる。

 警察を呼ぶ。その段階は既に通り越してる。

 というわけでもないが、控え室にいる警察に連絡を取るべく、

「佐藤さん、お仕事です。お願いします」

 店内放送をかける。

 数分も待たずとして、制服をきた警察がやってくる。

「お客さん、ルールは守らなきゃダメだよ」

 なだめるように言葉をかける。

「なんでわたしが悪いような言い方するの! この店が悪いのよ!」

 怒鳴り声が聞こえる中、次の客を対応する。

 異常な人がいたとしても、まともな人がいないわけじゃない。

「なんか大変そうですね」

「はは、そうですね」

 会計を済ませると、また1人また1人と客が減ってく。

 怒鳴られたり、睨みつけられたり、本当にレジが大変だ。

 僕はそんな相手に曖昧な表情を見せる。笑っても怒っても、泣いてもいない。でも、無表情でもない。ただの顔だ。

「お姉さん、顔が怖いわよ?」

「そんなことないですよ」

 この顔でトラブルになったことはない。

 何度か客に言われることはあっても、どうもしない。店長にもう少し笑えないのかと言われたこともあったが、この騒ぎの中その言葉は封印指定された。

 どんな客でも対応ができる人。

 それが今のレジ係に求められること。

「……」

 静かになったので後ろを振り返ってみれば、いつの間にか複数になった警察が問題行動してた人を捕らえていた。

 ざまぁみろと、僕は心の中で思うのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

お店の顔 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る