夜の木登り
バブみ道日丿宮組
お題:夜と木 制限時間:15分
夜の木登り
最初に書いておくと書いておけば、何でも許されるような気がする。
さてさて木に登ったのは、幼馴染のお風呂を覗こうと考えたから。
登り終えるまで実に2分。だいぶ練習したから早い。
「なにしてるの?」
声が下から聞こえた。
「……空の警備」
当然のように覗こうとした風呂には誰もおらず、代わりに幼馴染が下にいた。
「ふーん、ねぇ一緒にお風呂入らない?」
「お、お風呂? ど、どうして?」
言葉がかみかみでうまく作れない。
幼馴染からの提案は実に良案。願ってもみないことだ。まじまじと肌を見れる機会なんてイベントは発生確率が低い。なにしろ違う学校だ。遭遇することすらできない現状だ。
「久しぶりに背中流してあげるよ」
ほら、と幼馴染は手をこちらへと向けてくる。
その手を掴むには降りるしかなく、しかたなくするするりと木を滑る。
「もう中学生なんだから、こういった危ないことしちゃダメだよ?」
欲求が直球なんです、とはいえない。それに高校生の裸が見たいともいえやしない。
「女の子なんだからね」
幼馴染は言葉をそう付け加えると、パタパタとスカートについた葉っぱを払った。
「木登りを女の子がしちゃいけない理由なんてないし」
「男の子がみんなスカートの中見ちゃうでしょ」
何回も見られたことはある。そして残念そうに帰ってく。それが私のクオリティだ。第一に今日は夜だし、周りに人はいない。
計画通りだ。
「ドヤ顔してもダメだからね。大事な大事な身体なのだから。もしもがあったらお館様が怒ってしまうわ」
「別にあの人は関係ないし」
あの嫌らしい視線は気分が悪くなる。
「あなたが将来嫁ぐところなのよ? 印象を悪くしてはダメよ」
どうして私みたいなちんちくりんが嫁いで、幼馴染のようなお姉ちゃんが嫁がないのだろうか。
「……だって」
「恋が自由にできないのは大変だと思う。けれど、決まってるということも大事なことなのよ」
わからないよ。
相手がいない幼馴染には。
そう口にすることできない。
「ほら、お風呂入るでしょ?」
「う、うん」
これで何度目になるかわからない勧誘を私は今日も受けたのであった。
夜の木登り バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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