第2話 ドメスティックバイオレンス




「ゴメンなさい。もうしないから」





舗装途中の砂利の上での土下座はさすがにきつい。



「お前、もう知らん。お前みたいなケツ軽い女はいらんから」


友達の紹介で付き合って一年は経ったんじゃないだろうか。いつの間にかお前とか強い口調で罵るようになったアッ君。自分にとっては最初の男だったのもあって、とにかくアッ君が大好きだった。



「お前、教習所で男と話してただろ。普段も話してんのか?浮気だろ、浮気」


「何もしてないよ、ただ同じクラスだから話だけしてただけ  」


「もう終わりだな。もうお前なんか知らん。もう来んな」


「ちょ、ちょっと待って」



帰宅途中の高校生が素通りする中、アッ君の車は猛スピードで走っていった。





アッ君と出会ったのは高校一年の頃。それまでは誰かと付き合うなんてことも無かった分だけ周りがカップルになっていくと焦りしかなかった。


「千恵ちゃん、誰か紹介出来ん?」


当時付き合いしていた千恵は年上の友達が多い悪友で、万引き、シンナー、夜遊び、売春なんかを平気でやっていた。


「今度カラオケ行くから来る?夜だから泊まらないとね」



段取りの早い千恵は一週間以内に合コンのメンバーを探した。もちろん彼女たちは一緒には来るがあくまで目的は夜遊び。私が鼻息を荒くしているなんてどうでも良かった。




後日、親にはもちろんのこと嘘をついてお泊まりをさせてもらう。何かあってもいいように準備も出来た。




カラオケボックスには千恵と琴美ちゃん、そして私。

対面には同級生の男の子と五歳年上の決してカッコいいとは言えないメンズが2人居た。

千恵と琴美はデンモクを使って歌ってはタバコを吸い、酒を飲みを繰り返した。歌が好きだったけど、恥ずかしいなんて言いながらカラオケを断り五歳年上のメンズをチェックする。



「お家近いの?帰り大丈夫?」

話を切り出しきたのがアッ君だった。



「あ、はい。今日は友達のとこに泊まるって言ったので..」


「そっか。じゃ、カラオケ終わったら少しドライブする?」


「は、はい。行きます」


初めてのカラオケ、初めて異性とのドライブ。もしかしたらもしかするかもしれないと、変な妄想ばかりで頭がパンクしそうになる。


「一応、禁煙だから」

そう言って案内された車は見たことの無い高級車だった。これいくらくらいすんのかなぁ、高いんだろうなぁ。この人はお金持ちなんかなぁと口に出せない事ばかりが頭を過る。


「乗って」


もしかしたらもしかするかもしれないの頭が一気にリセットされる。

後部座席にですか。。。


運転席空いてるじゃんと思いながら、後部座席から身を乗り出してアッ君の話に耳を傾ける。



「セダンカー好きなんだよね。君は?」


「あ、えっと車の事はよく分からなくて。。」



「いつかお家に来たらいいよ、たくさん本あるから」


「はいっ」



全力で可愛さアピールをしたのに何も無かったことに無念さは残るが

家に誘ってくれた事に舞い上がった私は付き合うのは彼しかいないとまで思うようになっていた。



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46 半生 @yuntanzap

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