魔法体系

「魔法」と「魔術」の棲み分け:

 結局のところ、この2語の違いは日本語の綾でしかない。英語ではどちらも「magic」だし、この「magic」を語感はそのままに「科学と対比した魔なる法」と解釈したか「技術と対比した魔なる術」と解釈したかの違いでしかないと思う。日本語の表現によくあるやつだろう。ファンタジー世界で用いるとき、どちらに寄せるか困ることがあるかもしれないが、小説を創作言語で書くわけじゃあるまいし、日本語らしくそれぞれを好きな時に使えばいいと思う。第4の壁だよ。


魔法の分類法:

 体系化するにあたって最も重要なのが魔法というものの体系化だ。

 何事にも原因と結果があるものだから、原因と結果は分けて考えるべき。つまり、発動源と発動機序、発動過程、発動結果、発動後はすべて分けて考える。こう考えると、魔法ってDDJ-FLX6のMergeFXみたいだ。

 あとは単純に規模や難易度でも分類できる。

 ただし、気を付けなければいけないのは、何事にも型にはまらないものがあるということ。分類の境界線上のものや規格外なものは必ず存在する。そういう意味で、魔法の体系とはあくまで基礎的なものでしかない。


魔法の発動源:

 要は何を消費して発動するか、よくあるのは魔素とか精霊とか。珍しいところでは記憶とか感覚とか思春期の少女たちが絶望した時のエネルギーとか。体内のエネルギーと体外のエネルギーを区別するやつもあるよね。時々、まったくデメリットのない作品があるけど、いくら魔法とはいえ個人的には強引すぎると思う。

 NARUTOが最もよく説明できていると思う。身体エネルギーと精神エネルギーを混ぜたものを形態変化させることで忍術を繰り出す。自然エネルギーも活用した仙術でさらに強力にできる。でも、すべて利用にデメリットがある。あと使用者によって術の強弱や変化が違うとか。

 ただ、身体エネルギーはともかく精神エネルギーが一体何なのかについてはほぼ全く示されていないのでそこはちょっと困る。多分想像力なんだろうな......


魔法の発動機序:

 要はどうやって発動させるか。具体的には、

・念じるもの

・詠唱するもの

・紋章を描くもの(鋼錬とか)

・印を組むもの(NARUTOとか)

・他の生命を利用するもの(精霊とか悪魔とかにやってもらうやつ)

・魔石を用いるもの(砕いたり媒体にしたりするよね)

・なんか体内のエネルギーを循環させたり放出したりするもの(これもNARUTO)

 もちろん複合することもあるだろうし、多段的に発動することもあると思う。


魔法の発動過程:

 これはどんな感じで魔法が展開されていくか。地味だけどかなり重要な部分。ただし、分類はかなり難しい。火の玉を打ち出す魔法一つとっても、NARUTOの火遁のようにチャクラを物質とみなして燃焼させたり、召喚魔法みたいな感じで出現させたりする作品もある。呪いや召喚あたりになると、時間差発動や遠隔発動などもある。


魔法の発動結果:

 これは簡単だ。何を起こす魔法か。魔法の結果を言えばいいだけだから。五行とか4属性なんかの分類はこれに当たるだろう。この分類だけの作品も多い。ただし、これらの分類だけだと属性が表現しにくいような魔法は分類しにくい。そのあたりを表現するためにも、発動機序と発動過程の分類はとても重要になる。


魔法の発動後:

 魔素を源に詠唱をして手のひらに火の玉を召喚して打ち出すだけが魔法だろうか?いや違う。ライフルが弾を撃ち出した後、排莢しなければならないように、魔法も発動後の後始末が必要だ。上の魔法なら、召喚魔法を閉じる作業・詠唱の結句・余剰魔素の放出・魔素の残りカスの排出あたりが必要なんじゃないだろうか。自分なら、それを魔法で自動化しようと試みるだろうが、自動化するまではとても使えたものじゃないだろう。

 つまり、魔法は必然的に多段化する。もし多段化の回数に制限があるなら複雑な魔法は使えないだろうし、複雑な魔法が使えないなら魔法の体系化は遅々として進まないだろう。それなら、魔術を扱う人間が、同じ「magic」であるはずのエルフの魔法を使えなくても特に齟齬はない。辺境に住む孤独な老人が独自に編み出した魔法が「仙法」、悪魔と契約した魔女が使う魔法が「呪術」と呼ばれるのも納得だ。

 多段化する魔法は一般的に特殊なものとして分類されると思うが、もし魔法技術が発展することができたら、その発展によって多段でない原始的な魔法が逆に特殊なものに分類され、多段魔法と原始的な魔法を区別する用語が必要になるかもしれない。そう考えると、「魔法」と「魔術」の使い分けは便利だろう。日本語には他に無いからね。

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