4.
「ユウキ! 連絡ありがとうな」
「久しぶり、元気してた?」
「おう、遅れて悪い」
「来たよー」
四人で顔をあわせるのは久しぶりだ。
「それにしてもタイムカプセル埋めたの、よく覚えてたな」
「そりゃな。僕が覚えてないと、みんな忘れるでしょ」
「ユウキは昔から用意周到で子供らしくなかったよな」
「そういうシュンはガキ大将で手に負えなかったじゃないか」
「確かに」
昔の面影は残るものの、離れ離れになった高校生活で随分と様変わりした幼馴染たち。
「どこらへんに埋めたっけ?」
「イチョウの木の下だっけ?」
「あっちのツツジじゃね?」
「いいや、桜の木の下だよ」
「どの桜の木の下だよ」
ゆっくり会えるのは今日しかなくて、僕たちは懐中電灯を片手に公園のあちこちを探し回っていた。
「懐かしいな、よくかくれんぼしたっけ」
「鬼ごっこもしたよね」
「鬼ごっこと言えば、シュンが転んで鬼になって、すごく怒って泣いてたのを覚えてるんだけど」
「よく覚えてるな。さすが勉強できるやつは記憶力がいい」
ユウキは東京の大学へ進学すると言っていた。県内一の進学校でもトップの成績だったらしい。
「どっちの桜の木かまでは覚えてないな」
「俺はさっぱりだぞ」
「多分こっちだよ。枝の感じが見覚えある」
リョウタは芸術系の学校に進学するらしい。僕にはさっぱり意味のわからない絵を描くのだけれど、色の具合がなんだか気持ちがよくて、リョウタらしいなと思う。
「木ってのは成長するんだぞ?」
「大丈夫、自信ある」
「しょうがねえな、掘るぞ」
シュンは地元に残って、家業を継ぐらしい。代々続く酒蔵だ。地元に残るのはシュンだけだ。
「めちゃくちゃ不審者っぽいね」
「確かに、こんな暗がりで何やってんだって怒られそう」
「別に悪いことしてないんだから、大丈夫だろ」
「早く早く、タイムカプセル見たい!」
カツンと音がして、僕たちの期待は高まった。
ビニール袋に覆われた小さな箱が掘った場所から取り出される。
「はさみ、誰か持ってない?」
「持ってない」
「開けにくい」
「わくわくするね」
シュンがぶつぶつ文句を言いながら袋を破ると、お菓子のカンカンが現れた。
「開けるぞ」
各々の懐中電灯に照らされた箱は、スポットライトを浴びる主役のような出で立ちだった。
シュンがそっと蓋を持ち上げた。
「あー、こんなん入れてたっけな」
「感慨深いものがあるな」
「あの頃の宝物ってこういうのか」
「ラムネ飲みたくなってきた」
カラスの羽根。いつか拾って、かっこうよくて毎日眺めていたっけな。
「ま、こんなもんだよな。帰るか」
「そうだね」
「ラムネ買って帰ろうよ」
「僕はおなかがすいたなぁ」
掘った場所を埋め直し、それぞれの宝物を手に公園を後にした。
どこにでもあるものなのに、ここに僕の大事なものが隠されてる気がして、そっと仕舞った。三人ともどこか、何かを思い出しているような顔をしていた。
「飯でも食って帰ろうぜ」
「ラムネがあるところがいい!」
「このメンバーで食事はいつぶり?」
「楽しいな」
いつの間にか成長して別々の道へと歩んでいく。でもきっと、消えないものや思い出せるものもある。
胸ポケットに挿した羽根を指でなぞると、あの日と今日がつながる感覚がした。
タイムカプセル あるむ @kakutounorenkinjutushiR
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