【不条理小説】賞味期限切れのカンピョウ
水原麻以
賞味期限切れのカンピョウ
「都市ガスが狂った!」
「何だなんだ!」
隣室のパッパラパー子が着の身着のまま湯呑のまま鳩時計から飛び出した。
「ポッポーじゃねえよ!」
歪狂介が瀬戸物のタヌキを365個叩き壊した。「よくもあたしのタヌキを!」
パッパラーパー子が泣き出した。
「うるせえ!」
歪狂介は部屋の中を見て言った。「誰だ、お前は!」
「あの時に助けてもらった奴です」
「あの時って!」
「あの時は……」
「あの時は!」
「「ああん!」」
「とにかく俺は俺なんだ!」
「「「ぐすん」」」
「どうしたら良いと思う?」
「その前に……」
「「「「あの時に」」」」
そいつらは歪狂介がバミューダトライアングル沖の鬼が出るか蛇が出るか島で玉ねぎ退治をした時の残党だ。
「あの時はどうもありがとうございました」
生存者代表の玉ねぎ3号が涙ながらに包丁を振り回す。「ファッ?」パッパラパー子が光速の三分の一ほどのスピードで避けた。玉ねぎ3号は鬼が出るか蛇が出るか島の鬼退治を歪狂介に依頼した。鬼は玉ねぎが大の苦手でそれで原住民の玉ねぎ一族を虐待していたが歪狂介が新聞広告を通じて玉ねぎ3号の依頼を受理した。鬼は歪狂介の尽力で一掃された。その謝礼がカンピョウだった。しかし狂介は忙しいのですっかり賞味期限を忘れていた。せっかくの謝礼を無にされたのでたまねぎ3号が復讐しにやってきた。という言う次第だ。
歪狂介と玉ねぎ3号。
歪狂介は玉ねぎ3号に協力を申し出た。「何だ?やってくれるのか?」
「はい!」
「そうか」
玉ねぎ3号が言った。
「ならば話は終わりだ」
「「「「え?」」」」
「お前らも手伝うか?」
「えっ?お前らは何を?」
「俺は歪狂介だ」
「俺は歪狂介だよ!」
「この俺がお前らの手伝いをしてやる!」
「いいって言ってんだよ!この大馬鹿!」
「おう、やってやる!絶対だ!お前らの手で殺してやる!」
「馬鹿野郎!絶対に俺たちがやってやるからな!」
「言ってろ!」
ということでその後に玉ねぎ3号と歪狂介が力比べをして、玉ねぎ3号が負けてしまった。
「お前ら、俺たちに感謝しているときに力比べをして負けた。それを見て俺たちは思った。お前らの言う力比べに俺たちの負けはなかった。ならお前らの事は忘れ、何も見ず、何も感じずに俺たちに力を貸せ!俺たちはこれからもお前らのために尽くす。俺たちに力を貸すのがお前らの為なのだ!」
「え……?」
「何でも言ってくれ!」
「「「「えええ~!?」」」」
歪狂介と玉ねぎ3号。
「そう言えば忘れたことを思い出す!俺たちは玉ねぎ3号の力で島を丸ごと飛びきった!お前らのせいだぁ?」
「「「違う!これは、そう……」」」
「お前らのせいだとか言っていたが、実は本当に俺たちが何のための力を使うのか言ってなかったのではないか?」
「そんなことない!あたしたちの力で島を超えてきたんだから!」
「だったら力で島を飛ぶこともないだろう。お前らのように俺たちと力で勝負したほうがよっぽど早く島に着く!」
「でも……」
歪狂介は言い淀む玉ねぎ3号をじっと見る。
「そんな顔してもダメだ!ちゃんと言え!」
「………」
「早くしないと全員このことを知っている奴らが集まり過ぎてしまう!」
「………」
「お前ら、ここは俺に任せてさっさと島に着け。俺は時間を稼ぐからよ!」
「そうは言っても!」
「俺は時間を稼いだ後島に着いてくれば何されるか分からん!」
「でも……」
言ってから3号はハッとして言い淀んだ。
「あ!そういやそうだったな!」
歪狂介は立ちあがって3号の手を取る。
「分かった!3号には島までの付き添いをしてもらいたいのだ!この後に2号が来る予定もあるしだ!」
「うぐ……」
その時、歪狂介は猛烈な腹痛に襲われた。
そして霞ヶ関ビルに満天の土俵が咲いた。
(おわり)
【不条理小説】賞味期限切れのカンピョウ 水原麻以 @maimizuhara
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