誰でも一度聞いたことがあるだろう「食べ物で遊ぶな」という言葉を。
明確な宗教の無い日本国において、それは数少ない共有された禁忌であるかもしれない。
だが、唯一すたみな太郎においては、
その禁忌を破り、食の可能性を広げた悪ふざけみたいな食事が許される。
この小説は、そんな食の遊園地、すたみな太郎の魅力の一端を書いたものである。
物語としては近年の追放系の流れを汲みつつも、
ざまぁ要素はなく、むしろ一寸法師系統のクラシカルな英雄譚と言っても良いかもしれない。役に立たないと思われた主人公による恩返しである。
これが心に染みる。
勿論、インターネットプロレタリア文学こと、
すたみな太郎文学に対する目配せも忘れてはいない。
すたみな太郎の特色を活かした主人公の活躍、
そしてファンタジー能力を活かした食べ放題の攻略、
これらが高度に合わさった本作品は、
すたみな太郎ファンタジーという新しい分野を切り開いたことは言うまでもないだろう。
正直なところ、すたみな太郎ファンタジーは私も考えていたので、
かなり悔しい部分はあるが、今は帽子を脱ぎ、
本作品に対する称賛を送るのみである。