第44話

今日はあみちゃんの地元の神社で待ち合わせ。この神社は八幡神社系列で無人なんだけど、月に1回ぐらい偉そうな人が来てシャンシャン白い紙が付いた棒を振ってちゃんと何かやってるんだって。


きちんと整備もされてるし、しっかりと結界も張ってあるらしいから待ち合わせにはちょうど良し。あいつらも入ってこないし。


俺が待っているとほっくんがスマホ片手にやってきた。


「さめちゃーん、あみまだ支度中ー!モンストやろー!」


「いいけど、それあみのスマホでしょ?暗証番号わかるの?」


「あ…解除してもらうの忘れてた。」


あみちゃんは仕事用とプライベート用でスマホを2つ持っていて、片方を子供達によく貸してあげてるんだ。


悔しそうなほっくんとベンチであみちゃんを待っているとLINEが来た。もうすぐ来られるかな。


「あみちゃんがあぶない。しっかり守ってあげて。」


…ん!?どゆこと!?あみちゃんからのメッセージだけど。文面からして、これもしかしたらよしえさんじゃない!?


「よしえさんからLINE来た。」


「えー!?何て書いてあるの!?」


「あみちゃんが危ないから、ちゃんと守ってあげてだって。」


ほっくんが俺のスマホを覗き込む


「ほんとだ!でも、あみが送ってきたんじゃないの?あみからLINEが来たんでしょ?」


「そうだけど、本人がこんなこと打たないでしょ?」


「…つーかこのあみのアカウント、俺が持ってるスマホのアカウントじゃん!!ロックかかってるのに何で送れるの!?こえええええっ!!本当なんだ!!」


マジか!!お化けってそんなこともできるんだ…。


あぶないって…あみちゃん大丈夫かな。


「さめちゃーん!おまたせー!」


あみちゃんが焦ったように神社にやってきた。


「よしえさんから、あみちゃんがあぶないってLINEが来たんだけど!何かあった!?」


「え、いつも通りなんだけどな。ベムが居なくなって代わりの黒服達と、たまに篠田さん来てる。」


「よしえさん今はいないの?」


「今日は会ってないなー。たまに様子見に来てくれるんだけどね。よしえさんもイルミネーション好きみたいで、よく話付き合ってくれるんだー。」


「そうなんだ!危ないなんてLINE送ってきてどこ行っちゃったんだろう。大丈夫かな。」


「そうだね…平和教もあんな辞め方したから、狙われてるかもしれないし。でもよしえさん強いから大丈夫だと思うけど。」


「俺に良くドロンジョ一味見たいにやられてたイメージが…。」


「脱会してから、旅行とか食べ歩きとか趣味とか色々やってるみたいよ!青春を謳歌してるわぁって前言ってた。」


「元気ならいいんだけどね!」


俺らはいつも通り時間を潰す。日光東照宮へ行く予定や、御朱印集めの予定も立て始めた。早く強くなってあいつらに勝てる力が欲しい。


夜になり俺の夜勤バイトの時間。あみちゃんとほっくんも見送りにコンビニまで来てくれた。ほっくんは岩田さんに懐いていて、2人で楽しそうに遊んでいる。


「さめちゃーん、あの背の高い黒ずくめの、あのー、妖怪人間ベムみたいなやつはまだいるのかい?」


「あー、最近は来てないですけど、他の人達が来ちゃってて相変わらずです。」


「そっかぁ、俺に出来ることはほとんど無いけどさ、吉田さん不安だったら事務所に居てもらってもいいし、協力するからね!」


岩田さーん!ほんと良い人!ありがとうございます!ってそろそろ仕事の時間だ。


「あみちゃん、不安だったら事務所居ても良いって岩田さん言ってくれてるよ!」


…あれ?…あみちゃんがいない!!!!どこいっちゃたんだ!!


「あみちゃんさっきまで居ましたよね!?」


「あれ!!!?どこ行っちゃったんだ!?」


「岩田さんごめんなさい!ちょっと探してきます!ほっくんは先に帰ってて!」


どうしよう、本当に少しも目が離せない状況なんだ。今更気づくなんて…よしえさんにも言われてたのに!!


電話をしながら当てもなくコンビニを飛び出した。案の定電話にはまったく出る気配が無いが、アチャさんが力を入れてくれた根付けを取り出し握りしめながら電話をかけ続けた。


どこへ行っちゃったんだ…。もしあいつらに拐われてたとした伊豆方まで行くはず。…ということは電車だ!!


地元の駅まで走り始める。とにかく探さなきゃ!普段運動なんかしないからすぐ横っ腹が痛くなるがそんなこと気にしちゃいられない!間に合ってくれ!!


駅の階段を駆け上がる。本当に自分の判断が正しかったなんていちいち考えている暇なんて無い。ここに居なかったらもうわからない。改札口の方へ目を向ける。…いた!!


とぼとぼとうつむきながら改札口を通ろうとしている。


「あみちゃん!!!!」


周りの人のことなんて今はどうでもいい!全力で名前を呼んで駆け寄る。ICカードをタッチする直前にあみちゃんの手を掴んだ。体力の限界。息切れしながら問いかける


「あみちゃん!!どーしたの!!何やってるの!!」


話しかけても改札口を無理やり通ろうとしている。思いっきり腕を引っ張ると2人で大きく後ろに倒れ込んだ。


「…イタタタ!あれ、何でこんなところにいるんだろう…あ、さめちゃん!!」


よかった、正気に戻ったみたい。


状況を説明しながらコンビニに帰る。コンビニに入って喉が渇いたから飲み物の棚の方に近づいて、気づいたらさっきだったらしい。


「本当にごめんね、迷惑かけちゃって。さめちゃんと一緒にいる時はなるべく離れないように気をつけます。」


あみちゃんは入られたり操られやすい体質だから。本当に気をつけないと。俺も注意不足だった。始業時間からもうそろそろで1時間経っちゃう。岩田さんに謝らないと。


コンビニの近くまで着くと、ハッとしたようにあみが自動ドアの方に駆け出して行った。なにやら誰かと嬉しそうに話をしている感じを無言でかもし出している。


「あ、またお化けのお友達?」


「そうなの!紹介してなかったよね!!最近お友達になったゆみちゃん!ここに居れば会えると思って待っててくれたんだって!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

お化けポリス @mayomoya

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ