第43話
5歳の時にお別れしたなんて…それって今のぷりとと同い年じゃん…そんなの絶対無理!
「そんな辛いことがあったんだ…だからさめちゃんのこと。」
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「おーい、あみちゃーん、おーい。」
康平に何度も肩を叩かれ、あみは現実に戻った。
「このお婆さん、照勤のお母さんなんだって!」
「…照勤って、誰??」
「…。」
あみちゃんは自分が発した言葉に自分でびっくりしている様…諦めた様に俺に教えてくれた。
「照勤っていうのは、んーと、さめちゃんの前世…。」
その時俺の前世が昔新勝寺の住職をしていたことをあみちゃんが初めて教えてくれた。何でアチャさんは俺に力をくれるのかずっと不思議に思っていたけど、前世で繋がりがあったからなのか!
「住職って、本当!?凄いね!!」
「うん、そうなんだよ。前アチャが教えてくれた…。」
呼び捨て…そこにもびっくりしたけど、俺の前世かあ、本当にあるんだそんな話。
「あみちゃんの前世は何だったんだろうね!?」
「…トキっていう人だった。名前ダサいよね。」
あみちゃんが内縁の妻のトキであったこと。関係が上手く行かず、なんだかんだ不幸な感じだったこと。このお婆さんが俺のことをずっと見守っていてくれたこと。あみちゃんはこの時全部話をしてくれた。
「俺ってそんなひどいやつだったの!?…本当、ごめんなさい…。」
「いやいや、さめちゃんはさめちゃんだから。照勤にも色々あったんじゃない?良くわかんないけど!気にしちゃうかなと思って言えなかった。こちらこそごめんね。」
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「あみちゃん、ひょうちゃんのこと、よろしくお願いします。今私にはひょうちゃんを守るだけの力がまだ戻らないの。」
「うん!わかった!さめちゃんのことは任せといて!ひょうちゃんママは力が戻るまでゆっくりしててね。」
ひょうちゃんママは康平に近づくと、肩をやさしく撫でている。
「お不動様からこのお寺に居て良いとお許しを頂けたので、私はここに居ます。また会える時を楽しみにしているわね。」
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それから俺らは高幡さんに言われた通り、御朱印を集めてみることにした。
この先どうしていけば全然わからないし、言われたことをやってみるしかない。
関東36不動と言われている不動明王を祀る神奈川、東京、埼玉、千葉にある寺院36ヶ所で御朱印を書いてもらえれば完成するご朱印帳の周り方があり、お寺に札所と言われる番号が付けられている。その通りに回っても良し。順不同に回っても良し。
完成したものを掛け軸にしたりも出来るんだって!カッコよくない!?
さてさて1番札所を調べてみると…雨降山大山寺…。ここ大山さんのとこじゃん!!
またあの山道登んなきゃいけないのかよー、疲れるよー。もっと早く知ってれば良かった…。
まぁ、大山さん良い人だし。甘いもの好きらしいからショートケーキをお土産に俺たちは大山寺へ向かった。
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「大山さーん。」
大山さんは寝っ転がりながらスマホゲーに夢中な様で、あみが呼ぶ声に気づかない。
「大山さあああんっ!!」
「うおっ!!康平とあみじゃねーか!!本当に暇でよぉ、いつまた遊びに来てくれるかと思ってたんだぞ!!」
「はいこれ、お土産。知ってる?ショートケーキ。」
あみがケーキの箱を大山さんの方へ向けると、大山さんは恐る恐る箱を開けて、ショートケーキの『中身』を取り出し、まずは匂いを嗅ぎ始める。
「これは何だ?甘ぁい匂いと、果物の酸っぱいにおいが同時にしてくるぞ!」
「とにかく早く食べてみなって!絶対気に入るはずだから!」
大山さんは指でつまんだショートケーキをポイっと口に放り込んだ瞬間、びっくりしながら両手で口を塞ぎ何かを叫んでいる!
「大丈夫…?生クリームダメだった?」
「これの名前は何て言うんだ!?早く教えろ!!この白くて甘いのは何なんだ!?こんな美味いものは初めて食べたぞ!!」
いつもお供物ぐらいしか食べていないような大山さんには刺激が強すぎた様。
「おい!その康平が持ってるやつ!それも美味いのか!?」
康平が自分のおやつに買っていたぶどう味のグミに興味深々な大山さんは、グミの方へ手を伸ばし人差し指をツンと動かすと、『中身』を取り出された一粒のグミが袋から飛び出してきた。すかさず口へ放り込む。
「これは!!甘い餅だ!!いや、餅ではない!!餅が果物の味するわけないよな!?おい!何なんだ!!」
大山さんが焦ったように指をツンツンし続ける!グミ達が袋からピョンピョン飛び出す!!全てのグミを大山さんは一瞬で吸い込んだ!!!
「大山さん!ちょっと落ち着いてよ!恥ずかしいから!」
「もうこれ無いのか?他には何か無いのか??」
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「どお?大山さんケーキ食べてくれた??」
「ケーキどころじゃなくてさめちゃんの持ってるそのグミ、それまで全部食べられちゃったよ!!」
え…そんなに甘いもの好きなんだ。まぁ、良かった良かった喜んでくれてるみたいで。
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「ところでお前ら俺に美味しいやつを届けに来てくれるだけで来たのか?」
「んーん、御朱印貰いに来た。集めるとこれが力になるんだって高幡さんが言ってたから。」
「おー、あの真面目堅物かー!懐かしいぞ…そうだったな、お前ら変な輩に追われてるからな。」
「さめちゃんにまた力あげてよ。」
「いやいや、成田山の不動にそれだけ力貰ってたら俺の力なんか今となっては雀の涙よ。でもよ、俺にはわかる。康平は色々な力を溜め込める魂を持っているな。」
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俺たちは御朱印を貰い、お寺の横のベンチで休憩。残りの御朱印は34ヶ所かぁ、遠い道のりだ…。このケーキはもう俺が食べちゃっても良いんだよね!?大山さんが中身もう食べちゃってるはずだから。
「大山さんがね、さめちゃんは色々な力を吸収出来る魂を持ってるって言ってた。」
「力を吸収…。」
「水辺とか滝が良いって言ってたよ。あと近いうちに日光東照宮に必ず行けって。凄い力が湧いている所だから、絶対にさめちゃんの役に立つはずって。」
日光東照宮というと…小学校の修学旅行で行った小学生的にはとてもつまらないところだ!でももう大人になったし、パワーアップの為なら行くしかないよね!?
「また休み合わせて東照宮も行ってみようよ。車で行くことになるだろうし、ついでに御朱印集めも出来るだろうし。あ、あみちゃんグミ食べる?」
「えー、それってさあ、さっき大山さんが食べてたやつじゃないの??…うー、やっぱり味無いじゃん。マズ…。」
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