第32話 新たな時代へ。愛央の応援!

3月ももう終わり。4月になるとクラス替えがある。俺も愛央も、別れる可能性がある。別れる、と言ってもクラスが別れると言うこと。ずっと一緒にいる俺らは毎年不安になるのだ。


3月25日木曜日、修了式。愛央は朝から手を離さない。別れというものは人生に於いて必要なことだが、愛央も、実は俺も嫌いだ。髪を巻いて、ふわっと広がる制服を選ぶと、愛央はすぐに出てきてこういった。


あお「たっくん・・・」

たく「朝からあじした?」

あお「私たち、またクラス別れるのかな・・・」

たく「あー・・・」

あお「たっくんには、分からないの?」

たく「すまん。俺には分からん」

あお「だよね・・・」


泣かせたくはないが分からないものはマジでわからない。そこはもうどうにも出来ないのだ。不安げな愛央に何ができるかと思い、俺は部屋へ駆け込んだ。


あお「たっくん?何やってるの?」

たく「愛央、これ持て」


愛央がそんなしょげた顔をしたらおいねぇだろと思った俺は愛央にいつものモノを持たせた。持たせるとどうなるか。それは皆さんおわかりだろう。


あお「やっぱいい音っ♪でもなんで愛央に持たせたの?」

たく「簡単。愛央、それ持つと笑顔になるから」

あお「ふふっ。なるほどねっ♡」


愛央はすぐに察したようだ。そう、愛央ならではのルールがあり、ポンポンを持たせると愛央は必ず笑顔になるのを知っているから。笑顔になって少し安心したのか、コンビニへ出かけた。


あお「ただいまっ!」

たく「けえってきたけえってきた。さ、準備して行くべ」

あい「あい!」


うちの学校、靴はなんでもあり。ヒール履こうがパンプス履こうが構わないのだ。偏差値42なのに。その分入試で真面目だと思う生徒しか入れない分、こんな自由が待っているのだろう。ふざけるのを見たら即退学。さすが私立そこだけはしっかりしてる。


修了式にあいちゃんも連れていったが、方南高校1年E組は相変わらずだった。


先生「おはようございます!」

全員「おはようございます!」

あい「おぱよーございまちゅ!」

たく「お!すごい!」

あお「ね!」

先生「あいちゃんかなり喋るようになったね」

たく「そうですね。ここまで喋るようになるなんて。まだ1歳3ヶ月ですよ?」

あい「あい!ぎゅーっ♡」

先生「今日は修了式だからみんなしっかり受けるんだよ!」

全員「はい!」

あお「せんせー、あいちゃんどうしたらいいですか?」

あい「きゅぴ?」

先生「連れていくよ!あいちゃんも今はE組の仲間だもんね!」

あい「きゅぴ〜♡」


あいちゃん特注の制服はまだ来てないので、いつもの服で参加させた。でも先生が抱っこするわけにも行かないのでそこはやはり愛央に任せた。


あい「ねーねー」

あお「なぁに?」

あい「ミルクちょーだい」

あお「えー・・・あったかなぁ?」

あい「ひっく・・・」

たく「泣かせなくていい」

あお「えっ?たっくん?」

たく「ミルクだべ?」

あお「うん。持ってる?」

たく「当然」


式が始まる前だったので飲ませてあげてから、俺は自席に戻った。式はだいたい20分。すぐ終わったので教室へ戻ると、愛央とあいちゃんが先に帰っていた。


あお「にーにーかえってきたよ」

あい「きゅぴー!にーにーだいしゅき!」

たく「はいはいただいま」

先生「通知表配るよ!」

たく「あいちゃんももらえたらいいね」

先生「じゃあまず、匠と愛央!それからあいちゃん!」

たく「え、はっ!?」

あお「えっ!?私たち!?」

たく「なぜ俺らですか!?」

先生「3人揃ってこそだから!」

たく「えじゃ俺が行くの?」

先生「まぁとりあえず早くもらって!」

あお「何が書いてある?」

たく「え、すげぇ。俺と愛央の成績も書いてあるけど、すげぇのは」

あい「あいたんのことかいてあるの?」

たく「え、なんでわかった」

あお「すごーい!」

あい「しゅごーい!」

たく「読むよ?えーと、匠はいつもみんなのことをまとめて、発達障害の子を感じさせない頑張りを見せてくれました。愛央はチア部として頑張りながらあいちゃんと一緒に匠を助けてたね。あいちゃんは幼いのに授業中も静かにしてがんばって授業受けてたね。進級おめでとう。これからも3人で頑張ってね。・・・愛央、泣いてる」

あお「たっくぅん・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」

たく「こらおいねぇ。って、あいちゃん?」

あい「きゅぴ・・・ひっく・・・」

先生「やっぱり。2人とも泣いてるね」

たく「そうですね。先生、1年間ありがとうございました」

あお「先生、最後に写真撮ってください!」


4人で撮るのは最初で最後。YouTubeで使っている三脚を持ってきて正解だった。4人で撮ってホームルームを終えるとあいちゃんがこういった。


あい「にーにー」

たく「なーに?」

あい「ねーねー」

あお「なぁに?♡」

あい「あいたん、だいしゅき!」

あお「あいちゃん・・・私も大好き!」

たく「俺もだよ」

あい「あい!へへっ/////」


愛央は新学期に向けて、あいちゃんに初めてポンポンを持たせた。


あい「きゅぴ!きらきら〜!」

あお「ふふっ!きらきらして、可愛いでしょ?」

あい「あい!」

あお「次は・・・たっくんだよ!」

たく「は?俺?」

あお「応援するのはたっくんだけ!でしょ?」

たく「あっ」

あお「キラキラ振れるのは誰だっけ?♡」

たく「愛央だけ・・・か」

あお「フレ!フレ!たっくん!きらきらきら〜♡」


愛央はいつも以上に可愛かった(n回目)が、何か悲しそうな顔をしていたのだ。新学期に別れたくないからだろう。でも俺らは大丈夫。そう信じて、家に帰った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

琴乃家の日常 2nd Season 小糸匠 @koito_2716

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

同じコレクションの次の小説