第2話 胸を揉む勇気
「ちょっとまてやあああああああああああああああああああ!!!」
そんな叫び声とともに爆風が起こり、俺の身体は吹き飛ばされ地面に叩きつけられた。頭を打ったのか、血が大量に出てきている。
周りの人は慌てふためき、パニック状態だ。
なんかお祭りみたいだなぁ。学生の頃を思い出す。
呑気なことを考えていると、視界が暗くなってきた。
「あ、こんな感じで死ぬのね」
まぁ結果は変わらないし、俺にしては上出来だろう。それなりの人生だったかな。
もうすこし頑張れた気がするし、やりたいことももっとあったはずだ。
腑に落ちないが、俺はゆっくりと目を閉じた。
・・・目が覚める。
知らない天井だ。身体は思うように動かない。
「俺、生きてる?」
「いきてるわぼけええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!」
そんな大声が響き、心臓が大きく脈を打った。身体は今の反動で激痛が走っている。
周りに人がいると思わなかった。急に大声出すんだもんな。びっくりするじゃないか。俺は不満げな顔でそいつを見た。
「やぁ、おはよう」
緑の長い髪をした中世的な顔をした美女がそこにはいた。
なんだ、天国か。じゃあ胸揉んでも怒られないかな。
手を伸ばす。男のような固い胸がそこにはあった。っていうか男の胸だ。
まぎれもない、これは現実だ・・・。
「何してるのかな?」
「・・・すいません。気が動転していて」
「そうだよね、まさか僕が女性に見えて胸を揉んだなんてことじゃないよね」
「何を言っているんですかあなたは!頭大丈夫ですか!怪我でもしたんですか!」
「ごめんごめん、初対面の人にそんなことするわけないよね。怪我は君のほうが重いと思うけど、それだけしゃべれるなら大丈夫そうだね。よかった~、殺してなくて」
なんだか物騒なことをいっているな。っていうか俺はホームから飛び出す瞬間、爆風に巻き込まれたんだっけ。ということはこの人は助けてくれた感じ?
「あの~もしかして、駅で助けてくれた人ですか?」
申し訳なさそうに俺が話すと緑髪の男は微笑みながら、優しく答えた。
「そうだよ。生きていて本当に良かった。」
なんだこの女神は。惚れそうなんだが。いや、でも男なんだよな。俺は同性愛の気があったのか?そもそも性別なんか関係あるのか?今はジェンダーレスの時代だしな!ありなのかもしれない!いや、本当にいいのか俺!?
思考の迷路をさまよっていると会話が止まっていたのに気づく。
「あ、あの、ありがとうございます!」
なんで感謝の言葉が出たんだろう。俺は言っていて気付いた。
現実に絶望して楽になろうとしたのに、またこれから生きていかなきゃいけないのか。こいつはそのことをなんも考えていない。俺の絶望なんて気にせず、自分のために俺を助けたんだ。そんなマイナスな事を考えだしたら、口が止まらなかった。
「・・・でも、なんで助けたんですか?俺はこの辛い現実に絶望しているんです!もう生きていたくないんです!死んで楽になりたかったんだ!これからどうすればいいんだよ!!」
言っていて、自分が嫌になってくる。命の恩人に対してこんなことを言うなんて人間失格だ・・・。こんなこと言われたらぶん殴られてもおかしくない。俺だったらこんなやつとは関わらないな。
だが緑髪の男は相変わらず微笑みながら答えた。
「これからどうするか。いい言葉だよね。明るい言葉だ。君の言う通り、これからどうするか、一緒に考えよう。怪我の完治までにはまだまだ時間がかかる。最終目標は・・・そうだな、勇者になってもらうこと。これでどうだい?」
勇者のなり方 @bravextoshiki
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