遭遇
バブみ道日丿宮組
お題:疲れた海風 制限時間:15分
遭遇
人の生死を描いた作品は、大抵お涙ちょうだいの内容である。
……出会いと別れ。
それはとてつもない運命の導きによって、エンカウントするイベント。奇跡めいたものも中にはあるし、地獄のような結末を辿るものもある。
「……ふぅ」
そのはずなんだが、毎日同じ顔を見る。
「君もサボりかい?」
銀髪蒼眼の貧乳制服。
それが今日も僕の隣に座る人間だ。ベンチは二人でぎりぎりのため、必然的に急接近することになる。相変わらずモモの匂いがする。
「サボりだけど、なんでいつも同じ場所にいるの? つけてないよね?」
昨日はデパートの屋上、一昨日は河原。
なぜか知らないけど、彼女は必ずやってくる。
そして僕を見つけると嬉しそうに近づいてきて、断りもなく隣に座る。
「たまたまそうなってるだけであって、必然であることはないよ」
必然であってたまるか。
こっちは逃げたくて逃げてるんだ。
逃げる必要のない人間が近寄ってくるのは正直胸が痛くなる。
「君がサボりがちな理由は予想できる。が、それで休むのはあまりよろしくない」
「……居場所がないんだから、しかたないじゃないか」
どうせ自分がいなくても、世界は回ってる。それが教室内になるなら、余計回ることになる。
「その居場所を私にくれない?」
「えっ……?」
なにいってんの?
「どうせ明日もサボるんでしょ? なら、私と一緒に過ごしましょ」
「……比較されるし、嫌な視線を浴びることになるよ」
彼女は笑った。
「視線を浴びるのはいつものことだから、大丈夫。それにあなたがいれば、変な人が寄ってこないでしょ?」
「確かに僕は嫌われてるからね。人が離れてくよ」
それでもいいのと、言葉を続ける。
「二人だけの世界があってもいいじゃない」
「まるで恋人みたいだね」
「そう。そんな関係でもいいかもしれない。ここじゃ海風が凄いから家に行きましょう」
そうして僕は彼女と付き合うことになった。
なんてことない出会いがここから始まったのだ。
遭遇 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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