(最新45話まで読了時のレビューです)
主人公の雛形陽菜子は、幼少期に両親から半ば捨てられて人間不審気味となり、現在はトカゲを愛するあまりに獣医師を目指し女学生をしていた。そこへトカゲの診察に現れた竜凪琉旺の身体には鱗があり、彼女はまさに大興奮! そしてこのトカゲ愛から始まる数奇な出会いは、二人の運命を変えていくことになるのだった。
陽菜子ちゃんは基本的にトカゲにしか興味がありませんが、そのフェチっぷりが尋常ではなく、そのトカゲに悶えるアラレもない様子は一見の価値ありです。また、これまで人付き合いは極力避けていますが、トカゲ要素のある琉旺君に興味が湧いたことで、それをきっかけに彼の人となりを知っていき、次第に惹かれていきます。このように陽菜子ちゃんが琉旺君、そして他人に心を開いていく過程がじっくりと巧みに描かれており、見どころでしょう。
一方で琉旺君は、持ち合わせたハイスペックから数多の女性に言い寄られていますが、その薄っぺらさに辟易して半ば女性不信気味でもあります。そこで出会った陽菜子ちゃんの心優しさ、強さ、そして彼の中身を見てくれる誠実さに惹かれていきます。話が進むにつれて、彼が陽菜子ジャンキーになっていく様子が、とても面白いですね。
こうした恋愛力激低子な二人なので、成人の男女とは思えない、まさに中学生カップルのような遅々とした進展しかしませんが、そのジレジレをじっくりとご堪能いただきたいです。
みなさまも是非ご一読を!
昨今のフェティシズムは、性的倒錯などと定義されてもおりますが、さて肉球フェチでもある私は、肉球に対しどんなリピドー(性的衝動)を感じるのだろう?
行動としては、あの感触を味わうだけなのだ。
そりゃあ猫にしてみれば迷惑以外のなにものでもないだろうが、それで私が満たされるし、猫も「ちゅーる」にありつけるのだからWin-Winだ。
そこで思う。
触れるだけで満たされるにも関わらず、フェチなどと呼んでいいのだろうか?
こちらの物語の主人公、陽菜子さんは、トカゲや鱗的な存在のことになると、心拍数が上がり、興奮状態に陥り、周りが見えなくなり、ハアハアして、興奮しすぎて、鼻血が出る。
挙句の果てに「正直彼が人間かどうかなんて私にとってはどうでも良いことなのだ」と断定するほど自分の偏愛に対し正直者だ。
なんという純粋な想いだろうか。
社会的な立場や、集団生活の秩序を破壊することすら厭わないその行為の数々に「おいちょっと落ち着けよ」とハラハラしてしまうのです。
でも、一見、そんなまっとうな意見こそが、自分を抑圧し縛っている社会常識であることに気付く。
そう、本物のフェティシズムは、自分の立場や社会的尊厳など、求めていないのではないだろうか?
元来は呪術信仰、崇拝対象的な意味であったとも聞く。
つまり私の「肉球フェチ」は、せいぜい「肉球ファン」程度の執着なのだろう。
本作で気付かされた、陽菜子さんの純粋で崇高な意志こそが、本物のフェティシズムなのだ。
私は、自らの「フェチ道」を極めるために、その行く末を見届けなくてはならない。
そしてもう一つ気付く、ちっとも作品の紹介になっていないことに!