魔王とレベル99の勇者

@gameober

第1話魔王は逃亡する!

広く薄暗い広間の中央にある玉座で16歳程の見た目の少女が項垂れる。

少女は腰まで伸びた金髪に頭には角が生えており一見して普通の人間には見えない。

「ヤバイ!今回の勇者はヤバすぎる!!」

水晶玉から映し出される映像を見ながら頭を抱え叫ぶと立ち上がる。

「エニス!エニスはどこだ!」

少女が呼ぶと扉から一人の女性が姿を現す。

女性は短い黒髪に猫耳があり小さく頭を下げて広間に入っていく。

「アイリ様いかがなさいましたか?」

アイリと呼ばれた少女ほ頬を膨らませエニスにを睨みつける。

「いつも魔王様と呼べと言っておるだろ!」

「申し訳ありません魔王様、それで今回はどのようなご用件で?」

アイリは先ほどまで見ていた水晶玉を震える手で差し出した。

「これは・・・人間達が召喚した異世界からの勇者ですか?それにしてもこのステータスは・・・」

「異常であろう!?歴代魔王達が束になっても敵わないであろう!」

水晶玉には勇者の姿とステータスが表示されており、レベルは99と召喚されたばかりとは思えないステータスであった。

「流石にこれは勝ち目がないですね・・・魔王様ご愁傷さまです」

「勝手に殺す出ない!一族始まって以来の天才と謳われ、父上から魔王の座を譲り受けて人間界に出てきてみればこの仕打ちよ!」

それからアイリはぶつぶつと独り言を呟きながら広間をウロウロとしながら勇者に勝つ方法を考える。

「それならいっそ勇者から逃げますか?」

その言葉に勢いよく振り向き明るい笑顔を見せながらエニスに詰め寄る。

「エニス!それはいいな!どうせ勝てずに力を封印されて一生を魔界で過ごすことになるなら勇者から逃げてしまえばいいのだな。」

そう言いながらアイリは玉座の後ろから自室の扉に入っていく。

広く豪華な部屋の中でアイリはキャリーバッグに洋服やアクセサリーを詰め込みながら逃走の準備を進めていく。

「魔王様・・・本気ですか?魔王城をどうするおつもりですか?」

「もともと余は玉座に座ってるだけではないか!魔物達は勝手に生まれて勝手に生きておるし、四天王達は適当な場所で勇者を待ち受けておる!余がいなくても何も問題はないな!」

エニスは頭を押さえながらため息を吐きながらアイリの自室から退室していく。

1時間程念入りに準備した結果5つのバックに2つのキャリーバックと大荷物になっていた。

「これを余だけで運ぶのは面倒だな・・・やはり付き人は数人程連れていくべきだな。」

独り言を呟いていると扉がノックされる。

「魔王様失礼します、私も魔王様の逃亡のお手伝いをさせていただきます。」

そう言いながらアイリの荷物に近寄り整理をしていく、しばらくしてバックが一つに荷物がまとまりそれをアイリに手渡す。

「流石にこれでは生きていけんぞ?」

「逃亡しようとしてる者がそんな大荷物でどうしますか。」

しぶしぶといった表情をしながらアイリは机に置かれた地図を広げる。

「まずは一番近い町に行き情報を集めようと思うのだがどうだろう?」

「近い町ですとデビルシティですね」

「デビルシティって町の人達はそんな名前でよいのか?」

怪訝な表情をしながら地図に記された町の名前をまじまじと見つめる。

「魔王城ができる前は最果ての町と名乗ってましたが、魔王城に最も近い町と言うことで観光名所化しようとしてるみたいですね。」

「商魂たくましい人間達だな・・・」

そんな話をしながら広間に向かいアイリは転移魔法の準備をする。

「魔王様、町から離れた場所に転移しないと町の魔力感知システムに引っ掛かって人間達にきずかれてしまいますよ。」

「分かっておる・・・よし座標はこれでよし!勇者よ見事逃亡を成功させて目にもの見せてやるわ!」

周囲に魔力があふれ出し、二人の周囲に赤い光が照らされ一瞬のうちに二人の姿が消える。


町から2㎞程離れた丘の上に赤い光が照らされアイリとエニスの姿が出現する。

アイリは久しぶりに見る魔王城以外の場所に目を輝かせながら周囲をキョロキョロと見渡していく。

「ここから余の逃亡劇が始まるのだな!」

エニスは少々呆れながら町の方角を確認する。

「この数時間で魔王様の品位が一気に下がっていきますね・・・」

「仕方なかろう!あんな規格外の勇者相手では逃亡する他あるまい!」

「それよりも魔王様、町に行く前に魔力を押さえなくては人間達に気付かれてしまいますよ」

「うむ、しかし魔力を抑えると余の威厳がだな・・・」

そう言いながらアイリは自信の魔力を最小限まで抑え込む、するとみるみるうちに体は縮み角は無くなっていた。

一見して10歳程の少女の姿になったアイリは複雑そうな表情をしながらエニスをみつめる。

「とっても可愛らしいお姿ですよアイリ様」

なにか言いたげな表情であったが堪えて町に向かって歩き出す。

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