第5話 夢と生還

娘は助けられたものの ひどい熱を出して

うわ言のように彼女は繰り返した


「彼に会いました」

「夢で見たんです 私 夢で彼に逢えたのです」


「やっと彼に会えました・・左の片方の瞳を戦で失っていたけれど」


「彼は私をあの樹の下で その腕で抱きしめてくれたのです」


「雪が そう雪が

まるで花ビラが舞うように綺麗でした・・。」


嬉し気に語る


それから

それから それからの事

一月も立たないクリスマスが近くある日だった


長い戦から

遠い土地から黒髪の青年が帰還した


熱い大地の下

日焼けして沢山の傷を身体に刻み、彼は彼女の待つ故郷に帰ってきたのだ


もう一つ

付け加えるなら

武勲、名誉、ちょっとした富、財産と それに何より大事な命と引き換えに


その左の片目を戦地に置いてきたのだった



・・・

彼は全てを受け入れて

愛する娘を その腕に抱きしめた 愛する娘を抱きしめた。



初稿 2022年9月28日06:22

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その樹の下で貴方に抱かれる のの(まゆたん@病持ちで返信等おくれます @nono1

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