第2話 計画された自殺事件(1)

プロローグ

2月8日、夜ごろ。天気町の道路に、晴花と雨葉が歩いている。

先程から黙っていたが、突然

「雨葉〜、今日の仕事はこれで終わり〜?」

少し疲れたから休みたいと言わんばかりに晴花が言った。

「ええ、終わりです。何か事件が起きなければの話ですけれど」

雨葉はこう返し、疲れたから早く帰りたいという思いからスタスタと歩いていく。

「まぁ、最近事件なくなって良かったな〜」

なくなるのはいい事だが、

「…まだ事件がなくなって13日くらいですが…?」

雨葉の言った通り、まだまだ事件はなくなって期間が短い。また起こる可能性の方が高いだろう。

「そーだっけ?」

晴花は覚えていないようだ。まぁ、晴花の記憶力なら仕方ないかもしれないが。

「そうですよ…それに、何か嫌な予感が…」

「それはわかるけど」

2人は相当カンが鋭い。この予感は、後日当たるのだった。

1,一件目

「キャー!」

天気町東街、とある一軒家で突然女性の悲鳴が響いた。

「どうした!?」

慌てて男性が2階から1階に降りてきて、女性に駆け寄った。

リビングは酷かった。机はどかされ、椅子が一個、倒れている。

しかも、その真上には、ロープに首を引っ掛けた少女がいる。

1ミリも動かない。確実に死んでいるようだ。

「ひ、人が、し、し、死んで…あ、あれ、秋子…、?」

女性が状況を伝えようとしたが、言葉が突っかかっている。相当動揺しているようだ。

言い終わると、呆然として床に座り込んでしまった。

「嘘だろ…」

男性はそれだけ言って秋子と呼ばれた少女に駆け寄って、息を引き取っていることを確認して、床に座り込んだ。

「あぁ…なんで自殺なんか…秋子…」

女性は泣いている。だが、ふと、電話をした。かけたのは、天気町の探偵だった。

天気町探偵に、これを解決して…いや、助けてほしくて。

2,自殺現場の検証

自殺をした子がいると通報を受け、雨葉と晴花は菅原家に来ていた。

「はじめまして。電話を受けました、天気町探偵、双星雨葉です。こちらは晴花です」

かなり業務的で堅苦しそうな挨拶を玄関先ですますと

「来てくれてありがとうございます…どうぞ中へ」

まだショックで泣いている女性が出てきて、中に入れてくれた。

「いえいえ、仕事ですし、仕事関係なくほっとけないですから。大切な人を失うのは、辛いことでしょう」

雨葉はこう言った。

一見ただのお世辞的なものかと見られるが、雨葉の目は真剣であった。

決して、心から言っていないなんて事はないだろう。

「はい…」

小さい声でそう答えると、さっとどいて入れるスペースを開けてくれた。

「では、お邪魔します」

「お邪魔しまーす」

2人がそう言って部屋に入り、迷わず現場のリビングに行った。

「ふ〜ん…首吊りねぇ」

晴花が興味深そうに言ったのだが、内心何も考えていないだろう。

「椅子に立って首を縄にくぐらせ、椅子をけって首吊りかぁ…なんでこんな死に方したんでしょうねぇ」

雨葉が呟くと、

「え?」

と、不思議そうに女性が言った。

「だって、首吊りって痛いじゃないですか、苦しそうですし。なんか、首切った方が楽なんじゃ…って思いまして」

そう答え、しゃがみこんで椅子を見ていた。

「不謹慎かよ…てかさぁ、首切ったら自殺なのかわかんないじゃん」

どこかだるそうに晴花が言った。

「なるほど、自殺に見せかける…と、やはり僕の考察は当たっていそうですね」

その言葉は、まわりを惹きつけた。

「「考察…?どういうこと?」」

その場にいた二人が言うと、雨葉は

「戸熊、出ておいで!…僕の部屋に、瞬間移動してくれるかな、僕達3人を連れて」

と言うと、戸熊が出てきて

「はーい!わかりました!では、失礼しま〜す」

そう言って瞬間移動魔法をかけた。そして、ついたのはもちろん、雨葉の部屋である。

3,何かの実験?

何やら人型の人形やらマネキンやら証拠集めグッズだのがあふれている。

とても普通の人の部屋には見えない。

「さて、ここに人間がいるとしましょう」

そう言って、雨葉は椅子を真ん中に引っ張ってきて、マネキンを乗せる。

「そして、この輪っかに縄をかけて、この人の首に通す…っと」

そして首吊り準備ができたような図になる。

「マネキンなので、すでに吊ったようになってますが、ちゃんとまだ吊ってない設定ですから」

補足して雨葉が言うと、思いっきり椅子を蹴り飛ばす。

その椅子は、広い部屋の真ん中で蹴り始めたのにも関わらず、思いっきり壁に突き当たる。

すると、縄が締まり、首吊りが完了する。

「まぁ、実際こんな強く蹴る必要はないのですが…まぁ、これでいいですね」

そう雨葉がいい終わり、くるっと前を…観客を見ると、今まで唖然としていた晴花がつい口に出した。

「おいおいまってよ雨葉。お前、これで何を実証したの?」

そう、そこを雨葉は言っていない。

「自殺に見せかけた殺人の方法ですよ。こんなの、自分のものではない靴を履いて、手袋をして、指紋の付きにくいものをつければ、犯人がすごくバレにくいんです」

そう言い終わると、

「え…つまりどういうこと?」

と、女性が言った。

「つまり、彼女…秋子さんは、殺されたと言うことです」

雨葉が言いにくそうに言うと、女性は

「うそ…秋子…そんな…」

と落胆した。

「ごめんなさい…事前に防げなくて。本当にごめんなさい」

そう雨葉は謝った。そして、顔を上げてこう言った。

「その代わりに、いつか、犯人は必ず捕まえます」

「ありがとうございます…ありがとうございます……私は帰りますので…」

その言葉を聞くと、安心したのか、女性は帰っていった。

そして、しばらくして。

「そうだなぁ…魔界の探偵全員協力すれば、絶対捕まるよ」

と、晴花がさりげなく言うと

「えっ?探偵全員??」

と雨葉が驚く。

「だって、あいつらだろ?今回の犯人さあ」

晴花がそう答えると

「ふふっ…やっぱりそうですよねぇ…それも、恐らく幹部でしょう。これは単なる推測ですが…やはり、言わないことにします。わかってるでしょ?ねぇ、ハル兄さん」

雨葉はそう言って、晴花は頷く。

「もちろん」

二人とも、カンと推理は鋭いのであった

4,二件目??

一件目の死体が発見された日の、夜の10時

「さてっ、ここが待ち合わせ場所だよね〜♪あれ、5分も早く着いちゃった」

地獄町幹部『夜天』こと夜西天馬は、今回の二件目のターゲットと、時間町で待ち合わせをしていた。ちゃんと5分前に、相手を任せないようにくるのだから、相当紳士的と言えるだろう。

…その目的が殺人じゃなければ、の話だが。

「大体、そのターゲットが来るとは限らないしな〜」

そう呟いた。実際その通りである。だから、待ち合わせ時間を過ぎて5分たったら、迎えに…殺しにいくようにしている。

秋子の件のように。

「夜天さん、どうも。約束通り来ましたよ」

一人の女性…古都が背後から現れる。

「あっ、来てくれたんだぁ…優しいねえ、君。殺されること、わかってるくせにさあ」

そう言って天馬は笑顔で振り返る。

「その通りよ。ほら、早く殺せば…?あの子を冤罪で死なせたのは、私も悪いと思ってるの。自分は死ぬべきよ」

古都は、しっかりとした目で天馬を見る。

「なるほどねぇ」

そう言って刃物…ナイフを握らせ、首元当てようとした。

ちゃーんと指紋のつきにくい、落としにくい服と手袋姿をして…

プロのようである。だが、プロではない。

大体、こう言う殺人は、『魔月』…サイコパスで怖い殺人鬼の方が向いているのだ。

いやでも、彼は自殺に見せかけるのに向いていない。ついつい楽しんでしまうから。

そう天馬が考えていると、古都が呟いた。

「まぁ、でも…アンタを殺してからよ!私が死ぬのはね!!」

そう言って思いっきり天馬を押し倒し、ナイフを首元に当てた。

「死んでくれますよね、天馬さん」

そう言ってナイフを振ろうとすると…

「はははっ…一本とられましたよ、でもな、死ぬ気はないんだよ」

そう言って古都を押し除け、タンっとジャンプする。そして高所に移動した。

そして見下ろして抜いていた剣を向ける。自分を殺そうとした、殺人未遂犯に。

「ここまでよ!!夜天!!」

高らかに聞こえたその大声。それは下の正面方向から聞こえた。

暗くてよく見えないが、女性なのは間違いないのである。

「私は時間町探偵、時舞藍華です!あなたは包囲されてます、わかりますよね?今から逮捕します!殺人未遂の現行犯としてっ!!」

そう大声で言うと、藍華は天馬に近づいてくる。

「え?殺人未遂犯はこの子もでしょ?」

そう天馬は笑ってみせる。

「いいえ。この子は無実です。僕達の仲間ですから」

そういって、助手の夕方時が現れた。

「へぇ…なるほど、グルだったんだ」

天馬はそういうとひょいっと立ち上がり、地面に降り立つついでに、地面を剣で切り裂いた。

「……!!剣使いですか」

時が驚いて言う。幸い、包囲している人間には当たらなかったのだが。

「こんなあまっちょろい警備で、僕を包囲できたとでも?」

そう天馬は言うと、

「なるほど…これがまだ全力の包囲ではない、様子見だと、そう言いたいのですか」

と、時が言った。

「そうそう。だからねぇ、ちょっと魔法を使えば突破なんて簡単なの」

そう言って大きくジャンプし、

「『鍵乃扉』!!」

と…もう一人の幹部のコードネームを呼んだ。

すると、空中から無表情な女の子が現れ、天馬の手を掴むと、二人揃って消えた。

文字通り。消えたのである。

「…あーもう!逃げられたあ!!」

そう藍華がむくれると、地面を見た。

彼は、天馬はー…生意気なことに、地面を切り裂いた傷跡。

藍華の目から見て、逆十字架の跡は残して

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魔界探偵 藤原美羽 @miu29

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