魔界探偵

藤原美羽

第1話 双子の探偵任命と事件の始まり

1,探偵任命

2020年2月5日。早朝。天気は晴れ。ここは魔界、天気町の一軒家の1人部屋。

(誕生日にふさわしい、いい天気だな〜♪)

ベッドから起き上がり、窓の外を覗いた双星晴花はこう思った。

自慢の茶髪と黄色い目が、朝日に反射して光っている。

「っしゃあ〜!今日も頑張るか〜っ!」

そう言って思いっきり体を伸ばすと、

コンコン。

という音と共に

「ハル兄さん〜、起きてますか?」

という声がした。

(俺のことをハル兄って呼ぶのは…雨葉かな?朝来るなんて珍しいな)

そう思って素早くベッドから降り、ドアに向かってスタスタと歩いてから、ドアをバンッ!と音を立てて開けた。

そこにはやはり、晴花の双子の弟、双星雨葉がいた。まだ早朝だし、雨葉は朝日に弱いので、眼鏡の中の目は、かなり眠そうだ。自慢の落ち着いた黒髪も、少しばかりはねている。

「朝来るなんて珍しいじゃん。どうしたの?」

そう言うと、雨葉はにっこりと笑い、

「誕生日の朝くらい、一緒にいたいって思っちゃ駄目ですか?」

と言った。

雨葉は頭も良くてしっかりしているが、時々こうやって、晴花に対してだけは甘えてくるのだ。

「ん、俺も一緒にいたい。あ、ただし少し待っててくれない?俺、着替えなきゃ」

雨葉はいつものきっちりとしたシャツに身を包んでいるが、晴花はダボっとしたパジャマ姿である。

「了解です。廊下で待ってますね」

その答えを聞くと、晴花はすぐにドアを閉め、大急ぎで着替えた。

今日の服装は緑のパーカーに白の長袖Tシャツ、Gパンにそれだと少し寒いので下にヒートテックとタイツ。

着替え終わるとまたドアをバンッと開けて、今回は廊下に出て行った。

「さ、下に行きましょうよ。朝ごはん、作りましょ」

そう。晴花と雨葉は両親もいなく、面倒を見てくれてるおじいちゃんの浪葉も探偵業で忙しく、家事は大体2人でやるのが日課…のはずだが、晴花は家事が苦手すぎて、雨葉にほとんどやらせている。

「ふぇ〜、朝ごはん作んの未だにむずいんだけど」

だから晴花はめんどくさそうに言いながら、雨葉と一緒に階段を降りていった。

「ん?なんかいい匂いする!」

階段を降りていくにつれて、なにかの美味しそうな匂いが強くなっていった。

一階のリビングのダイニングテーブルには、美味しそうなパンと目玉焼き、ベーコンにコーンスープが並んでいる。どれも熱々で美味しそうだ。

テーブルの奥にはにっこりと微笑んでる浪葉さんがいる。今日も白髪と白い髭、細く青い目に渋く青い着物が決まっている。

「晴花、雨葉。おはよう。そして、お誕生日おめでとう。18歳か…早いねぇ、時が経つのは」

浪葉は、歳をとってはいるがしゃんとしていて、よく通る声でそう言い、席に着く。

「浪葉さん!おはようございます!ありがとうございます、そして、朝ごはん美味しそうっすね!」

「おはようございます、浪葉さん。朝ごはんやお祝いの言葉、ありがとうございます」

2人はお礼の言葉をいって、席に着いた。

「いただきまーっす!」

「いただきます」

2人は早速挨拶をしてから朝ごはんを口にした。

「ん!うまぁ…熱々でほかほかで最高〜!」

そう言うと晴花はパンをもう一口食べた。

「ふわふわなのにカリカリでおいし…」

雨葉も食べた後、ついそんなことを言った。

「ふふ、久しぶりに作ったから味が気になってたが、大丈夫そうでよかったよ…さてさて、私も食べるとするか」

そうやって手を合わせて「いただきます」と言って食べ始める。

そして10分後。

「「「ごちそうさまでした!」」」

全員が食べ終わると、

「今日は誕生日なんだから。座ってていいよ。私が片付けよう」

と言って、浪葉さんが全て片付けてくれた。


片付けが終わった後。

「さて、と。晴花。雨葉」

浪葉は席に座り2人と目線を合わせていった。な

「「はい?」」

2人が声を揃えて言うと、浪葉は一呼吸おいて

「改めて…お誕生日、おめでとう。さて、2人とも。約束は覚えていてくれてるかな?」

と言った。

最後の問いに晴花は

「…なんのこと?」

と言った。どうやら『約束』とやらを忘れているらしい。

「あー…ハル兄さんは覚えてないかもしれませんね。小学生の頃ですから。『18歳になったら天気町の探偵になる』っていう約束ですよ」

晴花の覚えてない部分を、雨葉が言い、にっこりと微笑んだ。懐かしそうに。

その言葉を聞くと、浪葉はこう言った。

「そうそう、それよ。さあ、どうする?今でも探偵になりたいというのなら…君達は優秀だ。すぐに任命しよう」

それを聞くと、晴花も雨葉も

「「やりたい!!」」

と言った。やる気は充分といった所だろう。

「…わかったよ。ほら、手をとって」

と浪葉がいうと、2人は素直に手をとった。

2人が手をとるのを確認すると、目をつむり、呪文を唱え始めた。

「我、現在の天気町探偵、双星浪葉は、新たに『双星晴花』と『双星雨葉』を探偵に任命する」

言い終わると、すぅ…っと、2人の手の甲に証文が記される。

魔力がなくとも、あっても、魔法の呪文を唱えると見える、唱えなければ見えない魔法の証文。

助手や使い魔にも記される証文。そして、今回の証文は、魔界の六つの町のトップだけがもつ探偵の証の一つ…

『天気町探偵』の証文。

この証文が記された。つまり…

双星晴花と双星雨葉は今、天気町の探偵になったということである。

「晴花。雨葉。終わったよ。もう手を離してもいいから」

そう浪葉が言うと、2人は

「「はぁ……」」

と、大きなため息をついた。緊張からくる疲れだろう。

浪葉はその様子を見たからか少し…いや、かなりの間をあけて、こう言った。

「ところで…今、晴れて探偵になったわけだが、2人ともスマホを持って町を歩きなさい。町の人と仲良くしたり,助手や使い魔を任命したりするのも、仕事だよ」

その言葉に2人は楽しそうに

「「はーい!」」

と返事をした後、スマホを持ち、

「「いってきまーす!」」

と言って玄関から飛び出し、町を歩き始めたのだった。

2,使い魔

「ふふ、楽しみですねぇ。久しぶりです、こんな楽しい気分で町を歩くのは」

「そうだな〜久々だよな!」

2人は楽しそうに話しながら歩いて行くと、一個のゴミ捨て場を見つけた。

周りは大手会社が多く、ゴミも多い。新商品のサンプルのボツも多い。

雨葉がゴミ捨て場をチラッと見ると、何かを見つけたのか

「あっー…ゴミに埋もれちゃってます!」

と叫び、ゴミ捨て場に駆け寄り、ゴミをわけ、ひとつのぬいぐるみを抱き上げた。

そのぬいぐるみは、ロックくまさん…名付けるならそうだろう。

紫色の熊に、トゲトゲがついている首輪と鍵のついたネックレスがついている。

目が半目で睨んでいるようで、口はあいていて牙がついていた。

とてもいい出来だが、ボツと書いてある紙が貼ってある。

「大丈夫?あー…ボツになった子は捨てられちゃうもんね…でも、ボツのままでなんかいさせないから」

そう雨葉がいいながらぬいぐるみを撫でると

パタパタッ、パタパタッ

と、ぬいぐるみが動いた。

「…!?おい雨葉、そいつ、動いた…!?」

晴花が驚くと、雨葉が呆れたようにこう言った。

「あのね、ハル兄さん…魔界では、食べ物飲み物以外なら、生きたいと強く願えることができたなら、動いたり、話したりできる、完璧な命ができるんです。忘れました?」

完璧な説明を言うと、雨葉はふっと笑い

「…さて、茶番はここまでにしましょうか」

と言った。それに晴花は

「へ?」

と間抜けな声を出して驚くしかなかった。

『茶番』とは、どういう意味なのだろうか…

「貴方ねぇ、『戸熊』でしょう?」

と、雨葉が言うと、戸熊と呼ばれたぬいぐるみは、ゆるくなった手からひょいっ、と飛び降り、たちまち煙をあげて人間の姿に変わった。

派手な綿みたいなものがついた紫色の上着に、無地の黒Tシャツに暗い紫のズボンに、紫メッシュの入った熊耳のついた黒髪に、牙のついた口、トゲトゲのついた首輪。目は黒と紫色で光っている。

鍵のネックレスも、もちろんついていた。

「へへっ、バレました〜?雨葉さん鋭いっすね〜」

そう陽気に言い、雨葉の方を見る。

「わかりますよ、僕は戸熊の主ですから」

雨葉は当然のようにこう言った。

「そうっすね!あ!」

戸熊は返事をするとくるっと振り返り、

「初めましてっす!雨葉さんのお兄さんでパートナーの方っすよね!晴花さん…でしたっけ、よろしくお願いします!」

と言った。どうやら、晴花とは初対面らしい。

「え、あ、よろしく?」

よくわからないでいて、疑問系になってしまったが、返事はできたようだ。

戸熊は2人の中間に立ち、2人の顔が見れる所に移動すると、

「さて雨葉さん、晴花さん…探偵任命、おめでとうございますっ!」

と言った。

「ありがとうございます、戸熊」

「戸熊…だっけ?ありがと!」

それぞれお礼を言い終わった後。陽気な男の声が響いた。

「あっれ〜?助手くん達じゃ〜ん!こんなゴミ捨て場で何やってんの〜w?」

陽気でありながらも冷静さがこもった、そんな声が。

3,冬木町と探偵と

「おまっ、なんでここにいんだよ!?」

「寒田さん…!?なんでここに…」

「誰っすか?あんた」

3人が声をあげると、誘はニコニコ笑いながらこう言った。

「え〜、ここにいちゃ駄目?」

すると、晴花が素早く反応する。

「駄目じゃねえけど何の用だよ!ここ、天気町!てめぇの所属は冬木町だかんな!?」

誘は笑いながら

「そんな言うかなwwまぁいいや。今日は普通に用事があんの」

と言い、胸に手を当ててこう言った。

「双星晴花さん、双星雨葉さん、天気町探偵任命おめでとうございます。同じ探偵になれて嬉しいです…っつーのは単なる社交辞令。まぁ、おめでとうとは思ってるけどさ」

言い終わるとスマホを出して

「さ、探偵くん達、スマホ出して。連絡先交換するから」

と言った。

「はぁ…?なんでてめぇなんかと連絡し合わなきゃいけねーわけ」

晴花は露骨に嫌がっている。

「俺だって好きで繋げたいとは思ってないしw探偵と助手はそれ専用のLINEグループがあんの。臨時の報告とかはここでするから。通知切るなよ?電話も一応繋ぐから」

どうやらそれは決まりらしい。3人は連絡先を交換した。

「あ、このグループ雑談禁止なんで〜。挨拶もしなくていいから」

思い出したように誘が言った。晴花はすぐに

「雑談なんてしたくねーわアホ」

と言い、誘がこう言ってきた。

「ひどいね〜wアホはそっちでしょ?」

「はぁ?」

この言葉で晴花がキレそうになると、

「ちょっと…何話してるんですか」

と言いさりげなく止めた。

「まぁ、用はこれだけなんで。じゃあ、俺は帰りますよっと」

誘はそう言い、帰ろうとすると、ふと足を止め振り返り、

「忘れてた、これ、あげる。お祝い」

パチンッと指を鳴らすと、押し花が入ったしおりが2人の手に落ちていった。

「しおりだけど、綺麗でしょ?飾っても使ってもいいから…まぁ、気に入らないんなら捨ててもいいけど」

と言い、少し微笑んだ。

「これ…『オドントグロッサム』と『アキノキリンソウ』、ですか?」

雨葉が少し驚いたように言った。

「そそ!こっちは冬と秋のものならな〜んでもとれますのでね」

そう、この魔界では、それぞれの町でできることやとれるものが違うのだが、冬木町は冬と秋の町だ。

「へぇ〜、これ、冬の花なんだ。冬木町らしいわ…ありがと」

晴花がそういうと、雨葉も

「このしおり、使いましょうかね…ありがとうございます、寒田さん」

と言い、誘は

「別に。同じ探偵になれたお祝いだし、お礼なんていらないって。じゃ、こんどこそ帰りますよっと」

そう言ってまた指を鳴らすと、今度はパッと姿を消した。

「……寒田さんは、花言葉知ってるんでしょうか」

雨葉が、誘のいなくなった道にぽつりと呟いた。

「どういうことっすか…?」

今まで、探偵同士の話なので口を挟まなかった戸熊が言った。

「そうだよ、花言葉がなんか関係あんの?」

と晴花も言う。

「まぁ、冬木町の探偵ですし、花言葉くらい知ってるんじゃないっすか?」

と戸熊が適当に言う。すると雨葉は

「花言葉…いや、考えすぎですね。たまたま綺麗にとれただけでしょう」

とふっきれた。嫌な予感を無視して。

4,各町では

〈時間町−人間界の時間を操る町〉

「藍華さん、新たに天気町の探偵が任命されましたよ」

オレンジの髪と目をした少年…時間町探偵助手、夕方時は座っている誰かに話しかける。その誰かとは、紺色の髪と目の女性…時間町探偵、時舞藍華だった。

「知ってるわよそんぐらい。彼、後輩だけど、すごく頭良かったな〜」

藍華は雨葉の先輩だったようだ。昔のことのはずなのに、褒めれるくらい印象に残っているようだ。

「そういえば初恋の人ですっけ?」

時はさらっと人の恋愛関係に突っ込んで言った。なぜ知っているのだろうか。藍華は話した覚えがないのに。

「やかましいわよ時!人の恋心をえぐらない!だからモテないんでしょ!」

そうとう初恋は気にしているようで、つい藍華は大声をあげ、時の気にしていそうなことを言った。だが、

「関係ないのでは…」

と、ろくに気にしていないようだ。

「うるっさいわね!」

傷をつけられなくて、ついにうるさいと言ってしまう。

「うるさいのはそっちですが…?」

案の定こう言い返され、だれかに助けを求めようとする。

近くにいるのは、灰色の髪と目をした、もう1人の時間町探偵助手、数名針音だけだった。

なので、

「あーもう!針音〜!助けてよ〜」

と助けを求めるが、

「…………」

黙って少しうざそうに藍華を睨む。

針音は一切喋らないが感情豊かなので、助ける気がないのは見ての通りである。

「嫌そうですけど」

さらっと針音の気持ちを代弁し、藍華は

「も〜!アンタ達ほんっと可愛気ないのよなんで!?」

と言い、頭を抱えた。

「可愛気なんて、僕に必要ありませんし」

「……」

藍華の言葉に時が言い、それに黙って針音が頷く。

「そういう所よ〜!!もういいわ…探偵任命おめでとう、雨葉くんに晴花くん」

このお祝いの言葉が届くように、時がさりげなく録音して届けたのは、また別のお話。

〈機械町−機械を作り管理する町〉

機械工場前、1人の男性が立っていた。持っていた鞄には、ある程度の工具と、小さい人気のオルゴールが入っている。

白髪に黒メッシュの男性…機械町探偵、機鉄理気である。

「理気さ〜ん!ここにいたんですね!」

そう言いながら元気に走ってくる少年は、黄色い髪と目をした…機械町探偵助手、針金雷斗である。

「そうだぞ。今日は一週間に一度の工場点検だと連絡したはずだが」

ちょうど工場点検が終わって立っていたらしい。だが、工場は機械町にたくさんあるし、理気の周り方には規則性がない。

「そうでしたっけ?まぁいいっす。いいニュースあるんすよ!」

雷斗は探し回ったのを気にしていないように元気に言った。

「さてさて、それはいいニュースなのか?」

雷斗はあまりいいニュースを運んでこないのだが、今回はどうなのだろうか。

「いいニュースのはず…っすけどねぇ。報告します!天気町の新しい探偵が任命されました!なんと、双星晴花さんと双星雨葉さんです!!ほら、いいニュースでしょ?新しい仲間でしょ?」

「…まぁまぁ、新しい探偵が増えたのはいいニュースかな」

そう理気が言うと、1人の男性が口を挟む。

「それが凶とでるか、吉とでるか…まぁ、どうでもいいですか」

それは、灰色に紺色のグラデーションの髪と目の男性…もう1人の機械町探偵助手、部類回流だった。

「どうでもいいって…相変わらずだなあ、回流」

理気が少し笑いながらこう言った。

「相変わらずって…嫌なら助手を辞めさせればいいのに」

回流はほぼ無感情な声で返し、また理気がこう言った。

「馬鹿だなあ、なんでわざわざ助手にしたのにやめせるんだよ。性格ころころ変わるやつより、一定のお前の方がいいさ」

その会話を聞いた後、雷斗は思い出したようにこう言った。

「そういえば理気さん、工場点検終わったんすか?」

「ああ、終わってるけど」

「なら次の仕事です〜!あちこちから機械の修理頼まれてますから!さ、行きますよ!」

やや強引に連れて行こうとすると、理気が焦ったように

「まて、俺、ある程度の工具しか持ってきてないから!取りいかねぇと」

と言った。だが、回流は落ち着いて

「その必要はありません。雷斗が出てったからなんとなくこんなことだろうな、と思ったんで、全部持ってきました」

と、言ってから理気の大きな工具セットを出して渡す。

「えっ、持ってきてたの!?ありがと!じゃ、行くか」

驚いたようにこう言って、2人の

「「了解です!」」

この返事を待って、3人で歩きだした。

〈春木町−春と夏の季節の町〉

とある少女が、タッタッタッと走り、2人が座っている扉を開ける。

「2人とも〜!速報よ〜」

桃色の髪と目をした少女…春木町探偵、春花結衣がこう言った。

「ホントに速報っすか?春花さんのんびり屋さんっすからねぇ」

水色と青の髪と目をした少年…春木町探偵助手、爽快万江がこう言って笑う。

「なかなか酷いじゃないの万江〜w」

否定しながらも笑っている、濃い桃の髪と目をした少女…もう1人の春木町探偵助手、花原香織が言った。

「も〜、2人ともひどいな〜!せっかく人が速報を持ってきてあげたのに!」

2人の言動に少し拗ねている。こういうところは大人のふりをしてても子供っぽい。

「でも、速報ってあれっしょ?天気町の探偵のことでしょ、春花さん」

ズバリと速報とやらを万江が言い当てると

「えっ、なんでわかるの〜!?」

と結衣が驚く。

「だって、今じゃあ町中にその速報とやらまわってますもん」

と、当たり前のように香織が言った。

「え〜…わざわざこなきゃよかったわ…」

残念そうに言うと、結衣はパッと思いついてこう言った。

「せっかくだから、花束でも送りましょうよ!ここ、春木町は花がたくさん咲いているもの〜♪」

「いいっすね!夏の花ならまかせてって!」

「花言葉とかは私が担当します、春花さん」

「よしっ、決まりね!」

この後、3人で仲良くお花摘みに行きました。

〈電波町−魔界インターネットを管理する町〉

カタカタカタ…

素早くパソコンのキーボードを叩く音が響く中、1人の黄色い髪と目をした男性…電波町探偵助手、金目機々が1人の叩いている男性に声をかける。

「揺さん、あの、報告が…」

揺さんと呼ばれた黒い髪と目をした男性…電波町探偵、波平揺は、相変わらず無視してキーボードを叩く。

カタカタカタ…タンッ!

叩く音が消えた途端、揺は喋り始める。

「っし、ハッキング処理完了〜!ハッキングした側のデータも全消ししてやったし!ったく、どんだけシステム低いんだよ、使ってるやつ、絶対説明書読んでねーな?ったく…」

超早口。誰かが口を挟む暇もないレベルだったが、一旦言葉が切れると、機々はまた話しかける。

「揺さん?あの!報告あるんすけど!」

今度は大声でそういうと、

「え?あぁ、機々いたのか。悪りぃ悪りぃ…で?報告って何」

と、返してくれる。

「天気町探偵に、晴花と雨葉が任命されたそうっすよ〜」

「お前…一応晴花と雨葉はお前の先輩だろ…?」

呆れたように揺が言った。

「そうだっけね?」

とぼけて機々が言うと、1人の女性…紫の髪と目をした女性…もう1人の電波町探偵助手、雄平真緒がこう言った。

「そうでしょうが、相変わらず記憶力が低いんですね」

「あっ、真緒じゃん、クレーム処理は終わったん?」

さほど気にしないでスルーし、機々は関係ないことを話し、真緒も

「終わりました。じゃなきゃここに来てません」

と返すと、揺が突然大声で

「あー!一旦黙れお前ら!機々は手伝え、ハッキングが多数のとこで起きてんの!」

と言い、機々は自分の席に座り、

「はいっ!」

と返事をし、

「ということはクレームが来てそうなので、行ってきます」

と、真緒はクレーム処理部屋に行った。

(仕事で忙しいが、手紙くらいは送るか)

と揺は、ハッキング処理をしながら思い、あとでひと段落ついたした後、みんなで手紙を書いてポストに入れたということです。

〈冬木町−冬と秋の季節の町〉

「萌〜、帰ったよ〜」

陽気だが冷たさを持ち合わす声で、黒髪青目の男性…冬木町探偵、寒田誘は助手に帰りを告げた。

「お帰りなさいませ。寒田様」

誘を寒田様と呼ぶ桃色の髪と目をした女性…冬木町探偵助手、古川萌は微笑んだあと、思い出したようにこう言った。

「あ、寒田様。存じ上げていると思いますが、天気町の新たな探偵が任命されました」

「あぁ、知ってる知ってる。それで出かけてからね」

そう軽く答えると、自分の家をふらふらと歩く。すると、なにかを思い出したのか、ふいに表情が暗くなり、手を壁に殴りつけ、何かを睨むと、こう言った。

「……双星晴花と双星雨葉…まってろよ。探偵なんて、名乗れないようにしてやる」

どんな思いが込められているのかは、誘以外、誰も知らない…はずである。

〈天気町−天気を操る者が多くいる町〉

探偵に任命された翌日の朝。

「うわぁ!何これ!」

朝起きて、見回りを終わらせた晴花はこう叫んだ。

「すごい量…四つも届け物がくるなんて、初めてですね…」

同じく帰ってきた雨葉も驚いている。

テーブルには、浪葉の『これはお届け物です』と書いた置き手紙と、四つの届け物があった。四つのお届け物を開けると、こんな物が入っていた。

時間町からは、お祝いの言葉が入った録音機、春木町からはいろんな色の花束。

機械町からは小さいが沢山の曲が入っている人気のオルゴール、電波町からは3枚の手紙。


どれも、キラキラと輝く、素敵なお届けものでした。

5,地獄町

時は少し経ち、双子の誕生日の3日後。

ここは魔界町外。魔界外追放をされた者達だけがいるところ。

ここで反省していれば、戻れる可能性もある。ここには食料も水も普通にあるんだから、生きる事だって普通にできるのだから。

だが、追放されたことにより、探偵や町を憎み、復讐したい者達がいる。その者達の集まる場所が『地獄町』。

地獄町にもそれ専用の証文と場所がある。

作ったのは現リーダー、××。後は7人の幹部で結成されている。

「××、明日のの夜は環境と月の状態が悪すぎる。白昼堂々と行かない?」

「それは危険かもしれない」

「なに、××、びびってんの?」

「違う」

「××が言いたいのは、探偵のことだろ?大丈夫。俺達は優秀だ」

「自分でいいますか、それ…」

「うるさいなぁ、とにかく、明日でいいんだよ!」

「仲良くやりましょうよ。私達なら、開かない扉はないんですから」

「まぁ、明日はそこまで大きな事じゃないけどね〜」

「そうそう、まだまだ序章だ。

あいつらの全てを壊す。それが俺らの目的だろ?まずは明日、計画通りじゃなくてもいい。とにかくやろう」

明日、2020年2月9日は…始まりの日。

彼らの復讐劇の幕開けである。

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