きみの涙を僕は拭いたかった

@yosechi

第1話 雨の続く日

 思い出せばあの日も雨音の続いている日だった。


 窓ガラスの曇るバスで僕は英単語帳を読んでいた。家と少し離れた高校に通っていおり、バスと電車で勉強するのは受験生である僕の日課であった。そこそこ席の埋まったバスの中できみは隣に座った。それからそんなに時間のたたないうちに左肩に重みを感じた。なぜだかその重みが心地よく感じ単語帳を閉じ壁になることに徹した。気づくと駅に着いていた、きみも気づいたらしく恥ずかしそうに僕に会釈をして降りて行った。じめじめとした空気の中で爽やかな風が吹いていった。僕もバスを降りようとした時、隣の席の取手にビニール傘がかかって居るのを見つけた。すぐさまバスを降りきみを追いかけた。普段は気にならないサラリーマンたちの波がこれほど大波にみえたのは初めてだった。階段の下に君を見つけた僕は階段を降りようとした瞬間、何か強い光が確かに見えた、視界が戻ると階段を踏み外していることに気づいたがどうしようもなく転げ落ちた。その瞬間きみと目があった気がしたが意識は遠のいていった。

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