東京女子が大阪に来て戸惑う日常あるあると、
全く悪気なくナチュラルに求められる、そこそこ高いお笑い偏差値(それがハマるかどうかは別問題 笑)
それを「天然」で返す転校生の探美ちゃんと、
転校先の同級生、城女子の訪ちゃんの掛け合いにほっこりします。
歴史と城愛が強すぎて、探美ちゃんには「石垣(というか石)好きの変人」だと警戒されるところからスタートする二人の関係ですが、
ラノベらしいライトな語り口で進むストーリーに相反して、
訪問先の「城」にまつわる歴史や城そのものの成り立ちを語る密度は、非常に濃いです。
良い意味で、文章と内容がラノベらしからぬアンバランスさを持っていて、
サラッと読めるのにボリュームがあって、とても読み応えがあります。
「城」初心者の主人公、探美ちゃんと一緒に分かりやすく学びつつ、
女子高生の楽しい日常が織り交ぜられた丁寧な描写に、
作者様の人柄と「城と歴史」に対する情熱が感じられる良い作品だと思います。
以前仕事で大阪に赴いた際、大阪にはお笑い芸人しか住んでいないのでは?
と思うほど、各所で交わされる会話の楽しさに耳を澄ませた記憶があります。
電車内でも普通の女子高生同士の会話が面白くて、よく聞き耳を立てていたものです。
本作は、東京から大阪に転校した女子高生と、そこで出会う魅力的な友人との日常に「お城」を混ぜたものです。
女子高生と○○○の中には、すでにお城を題材とした作品もありますが、本作はマンガ的な過剰演出もなく、実際にありそうな雰囲気の中、のんびりと進んでいきます。
個人的に、歴史って「何年に何が起こった」を知る学問だと思っていたのですが、よくよく考えると、何故、それは起きたのか?と自問すると、因果関係や前後関係をほとんど理解していない事に気付きました。
大阪城の天守閣から街並みを眺めた時、近代的な街と何百年も変わらない石垣が同時に見えたことを思い出し、お城といった史跡が、過去の因果から現在につながっていることを理解し、今度はそういった視点で眺めたいなと思うのです。
以前のように気楽に旅ができる日まで、本作によって疑似体験をさせてもらいます。