わたしのかんがえたかっこいいしゅじんこう!

通りすがりの語り部さん

とある非人道者の在り方

とある人の話をしよう。


 彼の人生は、在り来たりであり、尚且つ非凡であった。これは一つの喜劇の話。


 彼の生まれは普通であった。当時のその地域では良くある農家の生まれ。ただ時代は少々悪かった。まだ、近代化革命が始まったその当時、電気などが彼の国全土に行き渡るということなどなく、ガス灯などの街灯があるのも首都やそれに近い大都市のみなのだ。そのため彼の生活は陽が昇る頃に始まり、陽が落ちる頃に終わると他の動物と変わらないサイクルだ。


 何処にでもある光景、どこにでもある幸せ、どこにでもある平穏。まだ少年であった彼は特にこれ以上を望むことなく過ごしていた。


 しかし、時代はそれを許さない。人の生活が近代化するにつれて人は多くのモノを欲した。拡がる帝国主義。彼の国もその例外に漏れることなく、先住民の生活を駆逐し新天地を開拓する帝国主義を強いていた。


 しかし、土地には限りはあり、物資にも限りはある。起こるべくして起こった戦争があった。


 新暦1925年、首都ベルン近郊で起こった軍用列車爆破事件。それをことに発展した西側諸国戦争である。当時のゲルマン諸国は陸続きに東に駒を進め、その陸軍力によって各地を制圧していた。西側諸国東寄りの最果て、近代化の遅々として進まぬ弱小国家群へ軍事顧問官付属という、軍隊の近代化進める建前をもった機械化装甲師団を半ば強制的に送り込み、占領一歩手前の強行手段を打って出たのだ。


 とはいえ、西側諸国でも随一の軍事国家である。彼ら弱者になす術はない。


 時代は波乱の一歩手前である、人が軍にとられる時代、当然人は足りなくなる。彼のような農村の男は軍にとって喉から手が出るほど欲しくなる人手で、尚且つ大量に安定して確保できる資材じんざいであった。


 気づけば彼の安穏は終わり、ライフル肩に見知らぬ土地で過ごす日々が始まった。


 他者への蹂躙という形で絶え間なく国力を上昇させる国。そして当然のごとくそれを良しとしない他の近代化国家群。


 最前線へ送り込まれる物資を狙って起こった爆破事件。報復という形で始まった侵攻作戦。そして属国をも巻き込んだ大戦争。一度目の戦争は5年。その3年後に再び起こった二度目の戦争は8年。彼の青年期は殺しに溢れていた。


 しかし、そこには喪い難い想いも多くあった。


 ある戦友は未来を託し、祖国を思って彼を命を賭して守った。ある戦友は咄嗟に手榴弾に覆いかぶさって味方を庇った。誰もが死にたくないと呟き、生きて帰るぞと誓った者達だった。


『オレの家族を頼む。良い暮らしをさせてやりたいんだ』


 彼自身も彼らの為なら命は惜しくないと想える者達だった。当然嫌な上官もいたがそういったモノはすぐに死ぬ。人の命があまりにも軽すぎて、そっと息を吹くだけで消える世界じだい


 それがきっと彼の生きた時代だ。


▽▲


新暦1971年 晩春


 ジェット旅客機乗っ取り事件ハイジャック。終戦30年を迎えた式典の直前であった。反西諸国連合を名乗る少数部族のゲリラ行為の一環。後にテロと呼ばれる行為が初めて世間に広まった事件である。8名の犯人はベルン西より飛び立った旅客機を航行高度に昇る前の上空5000フィートにてジャック。乗客100名あまりの命と引き換えに東側国境付近で捕虜となった者達412名の解放を望んだのである。


 彼らは永らく西側諸国と紛争を続けて来た。そもそもは非戦闘民を保護するために行われた非正規戦闘で捕らえた者達だ。国家問わず重犯罪者である彼らは既に銃殺が決まっていた。彼らを野放しにすれば更なる被害が見込まれるのであるので当然だろう。自国ではないとしても、同盟国国境で行われた非人道行為を彼の国は許してはいけないのだ。それが戦後彼らの国が世界へ誓った正義であるのだから。


『君たちの要求は飲めない。我々は決して脅しには屈しない』


 まず第一に解放したからといって、乗客の命が助かる見込みは少ない。既に添乗員の半数は見せしめにえぐく殺されている。パイロットも副操縦士の太腿が撃ち抜かれているのだ。一応の止血は行われているが、早急な対処をしなければ彼の命も危ういだろう。


 彼らは旅客機と軍との間で行われる無線でのやり取りでそれらを行ってみせた。彼らは未だ時代に取り残された自由主義者。自らの幼い理想の為には他者の命も自らの命もどうでもいいのだ。そうやって育てられてきたし、それが誇りとして生きて来た。


 一切誇れるところがない行いだが、彼らを責めることが出来るのは神だけだろう。生まれも育ちも人は選べない。培われる情緒も、性格も自らが決めることではない。流され気づけば出来上がるモノだ。彼らも人という罪深き生物の枠組みの中で生まれた被害者なのである。


 愛で子を産み、育むのは人だけだ。何と素晴らしきことだろう。

 愛を失うことで人を憎しみ、人を殺すのも人だけだ。何と悲しきことだろう。


 神は不完全に人を創ったとおっしゃった。一人で完結してしまわぬように。

 だが、その不完全さは何時の時代でも人の命を容易く奪うものにしてしまう。


 自らが傍観者でいられるのは、知っているつもりであるからだ。命の軽さを知らないからだ。躓くだけで時に人は死ぬ。それも知らずに、いや例え知っても馬鹿なとただ嘲笑うだろう。



 彼は人の命の重みを知っていた。


 彼は神が既に人を見捨てたことも知っていた。


 彼は全てを救うHEROが世界にいないことも知っていた。


 故に彼は正しく間違えたのだ。間違えざるを得なかったのだ。


▽▲


『おじいちゃん、聞こえてる?』


 まだ年若い少女の声が聞こえた。彼の孫の声だ。彼が戦争より戻って来て、次の戦争が始まる前に出来た娘に、その娘から戦争が終わって幾分か年月が過ぎ生まれた子。彼女は戦場しか知らない彼の、面白みのなく他愛もなかった毎日を、かけがえのない友人たちの話を唯一聞く話し相手であった。


 よく笑う孫だった。ちょっとした、それでいて戦場では命にかかわる失敗を笑い話として、それでいて誇らしげに話す祖父とその膝に乗って飴玉を舐めながら相槌を打つ孫。ロッキングチェアをゆっくりと揺らし、暖炉の炎を眺めながら彼は様々な名もなき英雄たちの話をした。


「あぁ、聞こえている」


 多くの命を奪った。自らの命令で多くの命を未だに奪い続ける、現代まで生きる英雄。彼は祖国で軍部の最高位まで上り詰めていた。



英雄のいない時代は不幸だが、英雄を必要とする時代はもっと不幸だ。


一人の劇作家そう言った。


彼は人に求められ、時代が望み生まれた英雄だった。


 全てが焼き尽くされた時代で、人は救いを求めた。その時代を生きた人々は神には祈るが、神がいないことを知っていた。だからこそ、それに代わる救いを、神の代役を人に求めたのだ。


『すごく怖いんだ、おじいちゃんがお話してたお話を今実感してる。本当に怖いよ、私』


 彼は黙り込んだ。何と答えればいいのだろう?彼には分らない。絶対に助けるから?だがどうやって?時速700km程で飛ぶ飛行機に部隊を送り込むのは現実的ではない。よしんば送り込めたとしても、銃撃戦で半数は死ぬだろう。その中に孫娘が居ないとは限らない。


 では、人質の為に捕虜を解放するのか?


 それだけは絶対にありえない、彼には約束がある。平和な時代を望んで死んでいった友人たちへの誓いともいえる約束だ。銃火の中で無慈悲に消える命を作らない時代だ。たとえそれが理想だとしても、412名の兵士たちは解放すれば再び更なる多くの命を奪うであることはほぼ必定だ。それは少しでも戦争を知るモノにとっては誰にだって理解できた。彼らは悪逆であった。


『犯人に私がおじいちゃんの孫だって知られてたみたい。命乞いしろってさ。ホント馬鹿みたい。あいつらもう成功した気でいるんだ』


 当然だ、彼だって人の子。愛する者の為なら、もしもの可能性であっても縋りたくなる。現に少し傾きそうになっていた。分かっていても、彼らに従いそうになっていた。屍の上を歩いてまで誓った理想を捨てそうになった。


『おじいちゃん、私ね、怖いよ。すごく怖い』


 口を開こうとして、それでも彼女の力がこもった呟きがそれを止めた。


 でもね、それ以上におじいちゃんが私に話してくれたことを、私のせいで捨てちゃうことがもっと怖い。私、おじいちゃんが悲しそうで、でも嬉しそうにしてくれたお話、すごく好きだった。すっごく辛い時代を生きてきて、でも、絶対に明日を諦めなかった話。お母さんもおばあちゃんもおじいちゃんの話を聞いちゃだめだって言ってたけど、私はそうは思わなかった。だって、どれだけ手を汚してもそれはおじいちゃんのせいじゃない。死にたくないって思うのも普通だし、死なせたくないって思うのも普通だよね?今すごく分かるよ。


『だから間違えていいんだよ。私は命乞いなんてしない。だっておじいちゃんが好きだから。おじいちゃんの理想を守れるんだから。それに私もあいつ等なんかに負けてなんてあげないんだから』


 ……だから辛くても理想を捨てないで。


 彼女は知らない。彼のように多くの親愛なる友人を家族を失った身としては死ぬことよりも、生きることの方が、残され全てを背負う事の方が地獄と等しいモノであることを。


 それであっても英雄の孫は等しく英雄であった。彼女は彼に理想を望んだ。彼に更なる罪を求めた。そして彼はそれを断れない。そして彼女も理想に殉じるのだ。


 故に彼は英雄と呼ばれた。


「コード946282。鷹は落ちる、鷹は落ちる。繰り返す、コード946282。鷹は落ちる、鷹は落ちる」


▽▲


『大臣!今回どのような責任の取り方を成されるつもりでしょうか!』『何故、乗客を見捨て、飛行機を落したのでしょうか!』『お考えをお聞かせください!』『可能性があるならば部隊を送り込み救助を行うことは考えなかったのでしょうか!』『大臣!』『大臣!』『大臣!』



 白い煙を発しながら飛び立った二本の飛翔体が旅客機の推進部に突き刺さった。揚力を発生させるための翼をもがれた鉄の塊は緩やかに落下を始める。更に残った胴体に続けざまに突き刺さる誘導兵器。鉄塊の中から零れ落ちる人型をまだ保った命。


『見るな!それは貴公らの罪ではない!全て私の罪だ!』


 彼の声を聴き、戦闘機のパイロットはすぐさま気を取り直し、追加の攻撃を始める。当然旅客機への攻撃が行われた場所は都市部から離れた場所である。しかし、高高度であるがために巨大な破片を残せば市街地に被害が出る可能性も在る。ありったけの誘導兵器と機関銃が2機の戦闘機から放たれた。


 既に彼らの心には、自らが任務に忠実だった・・・・・・・・ことしか頭にはなかった。


▽▲


『少し、小話をしよう』


 私が生きた時代は奪うことでしか、何かを守ることができない時代だった。聖職者のように理想を唱えようと、嬲られ殺される。私より以前の時代もずっとそうだった。人は永過ぎる間、形こそ変われど同じ過ちばかりする。いやなに、時代が進むに連れ、一度の戦争で奪われる数が増えた故に悪化したともいえるな。


『閣下、ですがそれも終わりです。すべて対話で解決できる時代がくるでしょう』


『変わらんさ』


 平和というモノは手の届く範囲だけだ。他国を見ろ、未だに内紛は尽きず、食を得るためだけに人を襲い殺す子供もいる。子をさらい、金にするために分解する奴らがいる。だが汚すぎるモノは映さず、世界はさも平和であるかのように皆報じる。争いで死ぬ数は、旧時代と比べても遜色ない数だぞ?数千万が死なねば平和なのか?人の陰湿さも変わらずある、どれほどの者が己を、己の正義を通しているというのだ。


『見ろ世界を。手元だけ見て満足しているだけだ。自らには関係ないと物語のように思っている』


 命がけで紛争を写した者が命知らずだ、何を考えているのかと笑われる時代だぞ。確かにそうかもしれない、命は一度きりだ。彼らは人の過ちと言う記録を残している。それを多くの人が見ることで、戦争を、争いを嫌だなと思うことを望んでいる。彼らが伝えたい真実とはそういうことだ。だがしかし、どうだろう。残酷だからと言って、子供の教育に悪いといってそれらを規制して何となる。


『ただ何となくで人を殺すものが居る。人の死を理解していないからだ』


 物言わぬ躯とは、人の在り方すべてを語る者だ。何矛盾ではない、行きつく先は変わらぬと大いに語っている。人の命はあまりにも軽い。吹けば飛ぶほどにな。それ故に手を取り理解し、躓くものを抱き起さねばならぬのに、人は進化ばかりに目を向けすべてを個々で解決できてしまう世界を望む。


『それのどこが悪いのでしょう?誰かを頼ることなく、迷惑をかけることもない世界だ』

『悪いさ、私は神が人を不完全に創ったのは、不完全であるからこそ手を取り合うと信じていたからだと思っている』


 完全は孤独だ。誰とかかわり合うことなく生きていけるのだから。ならば、それならば、なぜ人は心を持つのだ。人を憎むあいするという、想いを持つのだ。人の技術が進化し、何もかも全てが個人でまかなえる時代に何ぞなってしまったのならば、人が人である必要性など無くなると思わんか?



▼△



 彼の最後は酷くあっけなかった。



 被害者に対する謝罪。撃墜された旅客機の乗員乗組員全ての遺族への謝罪巡りである。国家の重職につくものとしては、これは非常に異例のことで、自殺行為だと多くの者にやはりと言うべきか止められたが、それでも彼は断行した。


 彼の罪は国家としての必要悪だが、それを被害者遺族が感情で理解できるかどうかは別である。当然、石を投げられ追い返されることも多々あった。戦争を知るが故に彼の行いを理解しつつも彼への憤怒を抑えきれず、彼に殴りかかり取り押さえられるものも多くいた。


 皆が思っていた、『本当に他の手段はなかったのか?』と。彼の行いが正しかったかどうかは、全ての運命の分岐を見ることが適わない人類には分かろうはずもない。



 『地に落ちた救国の英雄』


 それが彼のメディア、市民からの評価であった。戦中の老害と罵られ、後ろ指をさされた。


 彼を慕う孫をその手で殺したのだ。家族からの罵声、娘からの罵声もあった。親子の縁も切られた。妻は戦中の苦労が祟って、娘が大きくなるころには死んでいる。あれだけのことをやったのだ。これを終えれば彼は大臣の椅子より当然引くこととなる。祖国かぞくを友を全てを愛して止まなかった英雄は地位も名声も、果てには家族までも失った。


 ほぼ全ての遺族への訪問を終え、彼は最後の訪問先へと足を向けていた。そこでは酷く悲しげに彼を見つめる老夫婦だった。


『私達は貴方がやったことを善き悪きを別として、間違っているとは思わない』


 でも、やっぱり貴方が憎い。私が戦争から帰ってきて、晩年にできた子だった。そりゃ喜んださ。生きて帰れるとも思わなかったからね。空から狙われればなす術もなく沈むふねを乗り継いで本土に戻ってきて、弾も飯もないまま泥地を進んでそれでも生き延びた。貴方と同じさ、ただ私は貴方と違って生き汚かった。そんな私とそれでも愛してくれた妻との間にできた子だ。


 『確かにもういい歳だったさ、世間ではおばさん呼ばわりだ。それでも私達の愛し子だ。当然私達よりも長生きすると信じていたからね』



 いつだって『殺したくて』、『殺した』ことなど無かった。


 全てが終わった彼は戦友ゆうじん達が眠る墓地を一人で歩く。とはいえ持ち帰ることもできずに、戦場に埋まっている遺骨も多く、形だけの空の墓。墓石だけただずっと並ぶ共同墓地。


 彼は青く晴れた空が嫌いだった。晴れの日はより多く鉛玉が降り注ぎ友の命を刈り取っていったからだ。

 彼は降りやまぬ雨の日が嫌いだった。泥のようになった塹壕で病に倒れる友人たちを多く見てきたから。

 彼はどんよりとした曇り空が嫌いだった。死ぬためだけにトーチカへ走り続ける日が何度もあったから。


 車を止めた駐車場までの道をゆっくりと歩く。平時には、ほとんどこの墓地を訪れるような人はいない。式典の時に遺族と政府高官が幾人か訪れる以外は寂しい墓地なのだ。


 ふと、彼の目の前で一つのボールが跳ねた。車道に転がったそれを拾いあげ、そして、これを落としたであろう子供・・を探す。


 そして彼の意識はそこで途絶えた。



▲▽



 彼の命を奪ったのは、子供がよく遊ぶボールを加工して作られた爆弾であった。明らかに人一人を殺すには過剰な炸薬を詰められたそれは、彼の腕を吹き飛ばし、そして彼の前面の表皮をすべて焼いて彼の命を奪った。


 ほどなくして犯人は捕まった。勝手な義憤に駆られた青年の犯行であった。


『殺人犯を野放しにしておくことが正義か!誰もが裁かないのなら俺が裁く!』


 それが青年の言い分であった。


『近代国家において、それは私刑に他ならない。そこに一切の正義はないのだ。貴方は知っているだろうか?』


 法とは何かを。官が自らを守るのが法なのだろうか?遺憾ながら確かにそう呼べるものも多くある。が、今ここにある法とは人を律し、人を守るために生まれたものである。上から下を見下していると、感じているのものも多いだろう。法とはどれほど整えようとも、それを外れ他者を害するものが居る。何故それが生まれたのか、それを考えず悪しきものとするものが居る。時代にそぐわない法を変えることは、我々も当然だと思う。地に住まう者たちでなく、権力者たちの良い様に作られた法を今の法へと変えた勇敢なる者たちを。それ以前のではただ気に食わぬからと殺され、証拠もなく無実の罪で裁かれる者たちがどれほど多くいただろうか。


 『だからこそ、知って欲しい。どのような悪人であれ、犯した罪は法の下で裁かれ、そしてその法で定められた刑罰によってそれを償うのだ。すべての罪がそれで償えるとは言わない。失われた命は戻って来はしないのだから』


 裁判官の悲しげな視線が青年を貫く。


『裁かれぬ罪を見逃したくせに何をのうのうと』


 一つのテープが流された。



『あいつら、この飛行機を街中に落とすんだってさ。オードリーの祭典がやってる広場に』

『彼らを解放してもまとめて全部吹き飛ばすって言ってたよ。ロイナ語をこっちが分からないと思ってべらべらとね』

『私以外のロイナ語が分かる人にも確認したから間違いないよ』

『ううん、その人たちには口止めしたよ。私達はどうせ助からない、なら喚いても一緒でしょ?』

『祭典に家族が参加してる人もいてね、すごく簡単に説得できちゃった。やっぱりこれおじいちゃんの孫だから才能かな?』

『録音テープいくつかあるんだ、乗客みんな少しずつこっそり録音して最後にはお外にぽいってするから頑張って探してね』



『おじいちゃん聞こえてる?』



▼△



『お父さん帰れそうにないよ、ごめんな?でもお父さん、ヒーローになるからね。悲しむんじゃないよ?強くなりなさい』


『死にたくない、でも、あんな小娘に負けるなって絶対に嫌だ。あ~もうホント嫌になっちゃうわ。ベル聞こえる?私みたいないい女、そうそうないわよ。でも、あんたみたいないい男ならすぐに見つけられるわ。なんたって英雄様わたしが言うんだから間違いないわ。またね』


『いやはや、死ぬと言われても実感がないよ。そうだ、今度の決済こそ私が処理するって言ったが、できなくなったよ。いやすごく残念だ、だが仕方がないからね?他の人に回してくれたまえ、いや~ほんとに残念だよ。君とやる仕事は楽しかったよ、我が友』


『父さん、母さんごめんね?ちょっとお用事が出来ちゃったから当分会えないわ。まぁ、どうせ、あと30年ぐらいしたらこっちに来るだろうし、気長にお茶でもして待ってるから。ここならきっといい旦那さんも見つかるだろうし、心配しないでね?』


『こうやって隠れてこそこそしていると年甲斐もなく学生時代を思い出してわくわくするよ、今も鮮明に思い出せる君と出会った場所だ。よく抜け出して、一緒にデートしたものだ。ちょっとしばらく抜け出して会いに行くことができなくなるが、何、その程度じゃわたしたちの愛は衰えはしないさ、また会おう』

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