第3話 数学教師 大前たかお
ガタガタガタ…
二時間目の授業が始まってからニ十分が経過した。二時間目は数学だ。高校に入学したばかりの私たちはまだ因数分解をしている。
ガタガタガタ…
とはいっても、因数分解は中学の時にある程度やっていた。そこまで難しいとは思わない。数学の教科書をめくると、現時点の私が理解できないような数式や公式が並んでいる。これからの方が不安だ。
ガタガタガタ…
………
さっきからガタガタ言わせているのは、私たちの数学教師、大前たかお先生だ。
大前先生は教室の入り口に引っかかっている。いや、大前先生は引っかかっていない。大前先生が持っている三角定規が引っかかっているのだ。
大前先生の三角定規はデカい。デカすぎる。数学教師は大きめな三角定規を持っているものだが、その数倍はデカい。
大前先生はいつも身体半分だけ教室に入り、引っかかっている三角定規を教室に入れようと四苦八苦している。こんな調子で一学期の数学の時間、一か月とニ十分が浪費された。始めこそ自習続きで喜んでいた私達だったが、いい加減それにも飽き、ただ無表情で見つめるようになっていた。
大前先生は額から噴き出す汗を拭い、叫ぶようにして言った。
「今日も自習な!」
大前先生は教室から出ると、廊下をスタスタと歩いて行ってしまった。
これからの方が不安だ。
北高の数奇な日常 須田玄 @sudagen0
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