∋『義経』試読版
柊 佳祐(紡 tsumugi)
第1話「腰越状」
第1話「
「私がもっとも先に思い出す古い記憶は、決まって あの夜のことだ」
「新しい
兄(頼朝)に「一番古い記憶は何ですか?」と、問うと「そんなものはない」と
しかし私(
私はそのことに安堵した。兄も私と同様に、
と、ますます
兄と酒を飲み
しかし我々(源氏)にとって、それだけで『全ての事は足りているのだ』……少なくとも、私にとっては、そう、今まで思ってきた。
だが……
義経は何事かを
「
義経は
この
だから、私(弁慶)はこう言った。
「その想いも含めて私がここに記しますので、どうかありのままの九郎(義経)様の心をお話しなさってください」
弁慶は、岩のようにゴツゴツした肌を繊細に動かし、極めて適切に穏やかに、
なぜなら弁慶の内には、義経への
「わかった、続きを話す」
義経は、真っ白な死装束のような薄い寝衣姿だった。
正座から脚を組み替え
そしてそこからまた少しだけ間を空けて、肩の力を抜き再び語り始めた。
「私はあの夜、いや……あの頃はいつも……いや、しかしあの夜は……私を
そこで一度唇を閉ざし 義経は眉を
(美しい)
――これが、この方の源なのだ。
と、ある種の感動を覚え 息を飲む。
そのなんの言語性もない『間』は、義経と弁慶との間にしか成立し得ないものだった。
そんな尊いひとときは、義経の開口によって断ち切られる。
「……しかし私は その心地良い母の
固く閉じた瞼は 否が応にでもそれを口に出そうとする信念が感ぜられた。
「そして、母がいるはずの部屋の前に着いた……その部屋の障子は、まるで私を
「私はあの時ほど、体 全ての筋と骨が、
『
弁慶の筆が
第1話「腰越状」――了――
※これはパイロット版です。
続きは書いてありますが……時と、一定の品質に達したら投稿します。
∋『義経』試読版 柊 佳祐(紡 tsumugi) @keikei7-8
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