第18話最終戦争後の地球。スコーチドアース

最終戦争後の地球。スコーチドアース。灼熱大地とも呼ばれる地獄に乾ききった風が吹いていた。焼け焦げて、溶けた荒野に文明の功績はない。

男は正妻との間に一人娘をもうけた。彼女をただただ護るために全世界を敵に回す覚悟を決めた。来るべき武力衝突――避けようがない宿命に精一杯あらがうべく、死の商人と懇意になった。兵器開発に積極投資し、武器を蓄えた。

そして因果がテレスコープの総司令官となった沙月を巡り合わせた。量子の数奇な作用は彼女たちを地球防衛のかなめに据えた。

「そしてはごらんのありさまだ。優実は俺に何不自由ない生活をくれた。それも些細な投資の失敗からものの見事に消し飛んだ」

信也はうつろな目で空を見上げた。

「奥さんはどうしたの?」

「円環の向こうに帰って行ったよ。娘を連れてな。彼女は過去の俺と永遠の逢瀬を繰り返すんだ」

最愛の長女ですら、信也を必要悪の頂点に君臨させる理由でしかなかった。

役割を終えた彼女は閉じた歴史の終端で消去される必要があった。

彼は剣を地面に突き刺し、縋りついた。男泣きが地面を震わせる。

「そう――で、突如として湧き出した物資を巡って最終戦争が勃発した」

へなへなと沙月が腰をおろす。

「なあ。もう、こんなことやめようや」

「そうね…人類の滅亡なんて誰にも制御できない事が分かったんだもの」

「そして、俺たち二人はまだ滅びちゃいない」


信也は女に手をさしのべた。





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Einfuhlung:いつかは、わたしをいざなう永遠 水原麻以 @maimizuhara

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