ドラゴンの惑星

間髪を入れず反論が来た。ゴンゴンと言葉が響き渡る。晩鐘で頭を殴られたようだ。

わかった、わかった。どこの誰だか知らないがもう少しお手柔らかにお願いします。


”ボリュームを絞った。これでよいか”

怒号の主はいきなりソフトな語り口に切り替わった。続けて心に直接語り掛けてきた。


まず、ここは教会でも冒険者組合でもない。ましてや、王都でもないという。

”惑星ドラグノフ…と、言っても、うぬらには天文学の基礎知識など持ち合わせておらぬだろう。ましてや天動説に支配された人間にはな。しかし、余はまず、うぬらにそこから説明せねばならぬのだ。気が重いわい”

疲れ切った声がそう告げた。こっちの都合などお構いなしに気が重いなどとずいぶん身勝手なやつだ。


”それはうぬらの自己紹介か。まっこと人間とはちっぽけで愚かな存在よのう!”

そういう、あんたは何様のつもりだろうか。

”余は…そうだな。人間好みの形容を用いるならば、さしずめドラグノフの守護神と言ったところか…”

神がおれたち一行を惑星ドラグノフ、つまり俺たちが立っていた場所を見下ろす地点に連れてきている。という事は、すなわち。

”死んでおるのだ”

おお、なんてことだ・・・なんてことだ・・・。王都に戻る魔法をしくじって命まで落としてしまうとは。

”ドラグノフを守護する者は全て滅ぼされるのだ。そこでの女神は人を慈しみ守護をしたのだが、滅びの世界で人は女神を呪った。女神を守ったのが人間でなくてはな!”

ほう、人を呪ったのか。それもそれはいいな。女神を呪い、転生しても死ななかったのだ。神様と名乗る事が許されるならこの異世界に召喚されてもおかしくない。

”そして時は近い。その時を待つばかり。今お前たちを転生させた人物を殺すべき時なのだ”

その人物がなぜあんなだ。

”その人物とは、これからお前の身を蝕み続けてくる悪。そしてこの世界を滅ぼそうとしている悪。それを防ぐ使命を受けている。この時を超えることが我が使命なのだ。”


「そんなものを信じるならば、俺が転生者だということを信じる奴も信じられないのが当然なんだろう」と、私は呟いた。


「だが、これからお前を助ける者が現れるのだ。人間の分際で神の裁きや神の裁きに反しそのなかのものと認めなければ、お前を助ける者は必ず現れる。これから先、神に仕える勇者や騎士、神からの特別な許可なしで女神に仕えられようという者には死罪が下される。それでも、女神に仕える者だけは神の裁きに反することなく、この星の創造神の一柱である。この場合、命を落とすのが自然の摂理だからな。必ずや女神の裁きに背いてはならぬ。それが、女神の信じるルールでもあるのだ」

この時点ではまだ、女神の怒りに触れてもいないのに俺は神様の裁きに従う運命なのか。神様の裁きに背くから俺は転生したのに。

”…そこでだ。転生者たるお前は女神のもとへ赴くのだ。お前が向かって『何か』を持ってくることを神は期待されている。余は、お前が女神への転生方法を理解するまで、その転生者達を観察し、時にはこの星に害を与えるような不埒なことを思うままにしてやろうではないか。”

”―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

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