それぞれの結末:越智美衣
「あ~どうすんのよこれ~」
妹は三面ディスプレイをウインドウで埋め尽くしながら対応に追われている。ありったけの複垢を縦横無尽に駆使して鎮火したり燃料を投下したり炎上を煽ったり世界一忙しい人間マッチポンプと化していた。ギネス認定は間違いない。ネオ文豪21と考える逆関節の結婚は確定事項として進んでいる。人の口に戸は立てられぬものだ。どこから漏れたのか越智和名の素性が洗いざらい晒されている。幸い挿絵の真意にまでたどり着いてないが、二人の進展具合や恋愛感情が詳細に綴られている。全くよくも好き勝手なこと書けるものだ。
美衣の役目は悪印象を極力薄めることだ。
「まかせたー」
姉は他人事のようだ。ぐったりと電池の切れた縫ぐるみのようにベッドの上でへたばっている。そりゃそうだろう。「初恋の人レーダー」が探し当てた相手が目の前で手料理をつくっているのだ。
「和名ちゃんの胃袋をつかめるよう、おばさん張り切っちゃうね~」
エプロン姿の根尾がフライパンを振っている。
「まかせたーって、この『僕が考えたイケてるネオ文豪』のフォルダどうすんのよ。つか、職人ども面食いすぎるでしょ」
画像アップローダーにBTSも真っ青なイケメンが投稿されている。NN21の中身が男だとかたく信じられている。
「元々はアンタが手を出したんでしょ~…ってどこ触ってんのよ」
和名が中の人を振り払う。
「粘着してたのは自分じゃん。つか、葛藤は同じ土俵でしか成立しないってね」
ディスプレイでカンガルーがじゃれ合っている。
「それってあたしらの事か?」
姉は根尾文子の大しゅきホールディングに沈んだ。
カンガルーボクシング 水原麻以 @maimizuhara
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