第8話  初夏の夕景

「初夏の夕景」


16歳の夕景は

父のバイクで走ったこと 

堤防の道が好きだった

湿った風とミカン色

初夏の匂いが好きだった


18歳の夕景は

汽車の窓から見えたこと

田植えのあとの山景色

一人暮らしに慣れたころ

はじめて自由になったころ


22歳の夕景は

働き始めたころのこと

仕事帰りに追いかけた

初夏の夕日に染まる空

雨の季節を考えた


二人で歩いた街のこと

夏の約束にときめいた

緑の雨の中にたたずんだ

何かをなくして泣いたこと

すべてが暮れる初夏のこと


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暮れ色 詩川貴彦 @zougekaigan

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