大人になったな

小さい頃、雪が好きだった。


雨とは違ってすぐにびちゃびちゃにはならないし、視界が白銀の粒でいっぱいになる様子は幼心にもどこか神々しく映っていたのかもしれない。


初めて雪を触ったとき、冷たい感触に驚きながらも美味しそうと思ったことを覚えている。

ふわふわとしてきめ細やかな結晶。神秘的な結晶の集合体を嬉々として口に運んだ。味はしなかったが冷たくてシャリシャリした食感がシャーベットアイスに似ていて、それ以降も冬の時期になると雪を口に入れては母親に怒られていた。



「今日も降ってくるのか」


初冬の時期には自動車が泥をはねて道路脇に汚い茶色の雪の塊を残していく。

朝は氷点下になることが増えマフラーをしても結局は寒いし、視界をしんしんと通り過ぎていく粉雪は秋に大量に発生する雪虫みたいでうっとおしい。

頭に軽く積もった雪は電車内の温かい温度で溶けてきて、髪が濡れてしまう。


これ、雪にも酸性雨とか関係あるのか?

頭皮が薄くなるのを気にして、コートの裾で濡れた髪拭いてみる。

薄毛を気にしていたからか、電車から見える家に薄く積もった雪がふきでたフケに見えてきた。


「……はあ、仕事終わりにシャンプー見てくるか」


帰りには止んでるといいけど。





テーマ【雪】

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インスタントフィクション集 じみな男 @botto_zimina

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