第7話 東京駅 23:45
私たちはバス乗り場に立っていた。送別会はそこそこ盛り上がり楽しかったが、私はあなたのことが心配で仕方なかった。並んで前を向き私は思わず言う。
「頑張れ」
「うん」とあなたは答える。そしてもう一度
「頑張れ」という
「うん」今度の返事は涙声だった。
「頑張れ」
「うん」明らかに泣き声だった。いつしか私の目からも涙がこぼれていた。
バスが入ってきた。するとあなたは自分を奮い立たせるように、大きく深呼吸をするように息を吸い。
「行くね」というとバスへと歩き出した。少し行ったところであなたは振り返ると、
「さよなら」と言った。私は思わず、
「無理するな」と叫んだ。するとあなたの顔は再び崩れて。大粒の涙がこぼれた。もう一度私は無理するなと叫んだ。でもそれは言葉にならず。代わりに私も大粒の涙がこぼれた。振り絞るように
あなたは「じゃあ、また」と言った。
または無いんだよと思いながら。私も
「じゃあ、また」と言った。それがいつもの私たちの別れの挨拶だった。
バスが出発するとバス停の時計は0時をさしていた。
エゴとリアルとイノセント 帆尊歩 @hosonayumu
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