公衆電話は愛せない

ちぃーずまん

第1話 閉ざされた公衆電話

 俺、嶺山大河は今日こそ告白する。

幼馴染みの七森愛七に告白するのだ。


 放課後、俺はいろいろと計画を立てていた。

どこの場所で告白するか、なんて告白するか等々。


 やっぱ場所は小さな頃から二人でよく行った海にしようかな。

夕焼けの刺す海、なんともロマンチックじゃあないか。

 告白の言葉は無難に『好きです。付き合ってください。』でいいかな。


 よし決めた、早速愛七を海に呼び出すとするか。

 愛七に連絡するために、かばんからスマホを取り出した。

そして電源ボタンを押した。

…………が、

つかない。

何度も押してみるが、つなかい。

 忘れていた、今日の自習の時間、先生がいないのをいい事にゲームをしまくってたら充電が切れたのだ。 

あいにく、サブの充電器もない。

 はて、どうしたものか。

今日はやめて明日にするか………

いや、俺のこの思いはとめられない。

1日でも早く愛七と付き合いたい。


「うおおおおー!!」

俺は走り出した。

公衆電話を探して。

よかった、こんな時の為に愛七の電話番号を覚えておいて。


 公衆電話を探して10分。

中々見つからない、普段何気なく見かける公衆電話だが、探してみると案外見つからないものである。

スマホの普及で段々と撤去されていってるって聞くしな。


 気がつくと、俺は人気のない田んぼ道へと出ていた。

(はあ、こんな所に公衆電話がある訳ないよな。)

そう半ば諦めながら、トボトボと歩いているときだった。

僥倖。

数百メートル先に長方形の四角いBoxが見えた。

こ、公衆電話だ。

俺は田んぼ道を全力疾走で走り、やっとのこと公衆電話までありつけた。


 公衆電話に入り、扉をガチャンと閉める。

受話器を取り、お金を入れる、記憶している電話番号を震えた手で一つ一つ打ち込む。

緊張しているのだ。

 幼稚園、小学校、中学校が一緒で親同士も仲が良かったのでよく一緒に遊んでた。

 高校に入り、会う機会は減ったが一応バレンタインデーにチョコを貰えるくらいの仲ではある。義理か本命かはわからないが。

はたして、愛七は俺のことを恋愛対象として見てくれているのだろうか。

いやいやいや、そんなことはどうでもいい。

気持ちを伝えることが大事なのだ。

そう思い、最後のボタンを押した。


プルルルルル、プルルルルル、プルル……


 コールが3回目の途中で途切れた。

出たのか、と思ったが声はしない。

どうやら、切られたようだった。

なんで………?

と思ったが、考えてみれば非通知だ。

怪しんで出ないでないのが普通だろう。

だがここで諦める俺じゃない。

再度電話番号を打ち込み、愛七に電話をかける。


プルルルルル

ガチャッ

お、今度は出たようだ。


「あのう、どちらさまですか?」

怯えたような、か細い声でそう尋ねてきた。


「お、俺だよ、俺。俺、俺」

やばい、ついテンパってしまって変な返答をしてしまった。


「オレオレ詐欺ですか……?」


「あ、ごめん。俺だよ、大河だよ」


「え、?大河?なんで非通知なんかで電話してくるのさ」


「それは携帯の充電がきれてしまってだな」


「そうなのね。で、なにか用?」


「これから時間、空いてるか?」


「うん、まあ今日は部活ないし空いてるよ」


(ふふっ、実はそれもリサーチ済みなのだ。 愛七の部活の休みは把握してる。)


「良かった、じゃあいつもの、海岸に来てほしい。」


「いつものって中学校の帰り道よく寄り道してた海?」


「そうそう、そこ」


「んー、まあいいけど、なんで?」


「いやあ、久しぶりに愛七と話したくなってな。」


「あははっ、なにそれ。まあわかったよ、20分後くらいにはつくかな」


「うん、わかった。それじゃ」


「また後でね」


そして受話器を置いた。


ふぅ。

なんとか誘い出すことには成功した。

でも、本番はここからだ。

人生初の告白。

必ず成功させてみせる。


 ここの田んぼ道から海まで結構距離あるしな。

俺もダッシュで海に向かわねば。

そう思い、公衆電話の扉を押した。


………ん?あれ、開かない。


ガコンッ、ガコンッ


押してみても引いてみても扉が開かない。

え、嘘でしょ。

閉じ込められた?


───


 数分間、試行錯誤してみたが一向に扉が開く気配がしない。

 幸い、上の方に空気孔があるので二酸化炭素中毒で窒息死する恐れはない。


 まじで、どうしよう………

てかまずなんで開かないんだよ。

そうだ、消防に電話すれば救出してくれるかも知れない。

そう思い、受話器を取り3桁の番号を押そうとする。

 だがそこで一つの赤いボタンが目に入った。

さっきまでは、緊張していて気づかなかったやうだが、左上にあるそのボタンは一際目立っていた。


(なんのボタンなんだろう………)


 押すか押さないか迷った末、俺は結局押してしまった。

謎のボタンがあったら押さない訳にはいかないだろう?

それが男のロマンってものさ。

それにこのボタンを押したら扉が開くかもしれないしな。


──だが、そんな期待は一瞬で消え失せた。


 ボタンを押した瞬間、

『ウィーーン、ガシャン、ウィーーンガシャン、ガシャン』

という機械音をたて、電話Boxが変形した。


 電話Boxから変形したもの。

そう、それは見るからにバイクのハンドルであった。

 真ん中にスピードメーターがでてきて、その脇にブレーキのついたハンドル。

そんな感じだった。


 俺はそれを見てあ然とした。

いやいやい、おかしいでしょ。

なんで電話Boxがハンドルに変形するの!?

普通に考えてやばいでしょ!

なにこれ、ドッキリとかなの?

へ?それそもモニタリング?

『人は公衆電話に閉じ込められて、ボタンを押したら電話がハンドルに変形したらどんな反応をするでしょう。』

てきな、モニタリング?

だったら、いいよ?もうネタバラシしてきても!

 そう思い、公衆電話の中を見渡してみるがカメラらしきものは一切ない。


 もうこれ、電話に戻らないのか?

そう思い、ハンドルをもう一度よく見てみると今度はスピードメーターの横に黒いボタンがあった。

 これを押せば電話に戻るのかな……

ポチッ。俺はボタンを押した。


『ガタンッ、ガタンッ、ウィーン、ガシャンッ』


 またもや、その変な機械音とともに、今度はこの公衆電話内にも大きな振動が走った。

そして、なにやら公衆電話は少し浮いたようなきがする。

 下を見ると、そこには4つの黒い車輪が着いてあった。


もう……なんなのよこれ。


 ほんとにこの公衆電話で走れっていうのかよ。

これ作ったやつまじで頭大丈夫か。

愉快犯的なやつがこんなイタズラをしているのだろうか。

にしては、あまりにも凄すぎる。


 ふと腕時計を見てみると、愛七が海に着く時間まであと少しだった。

 この謎の公衆電話に呆気にとられて忘れていたが、海に行かないといけないんだった。


 仕方ない、これが本当に走るのならば運転して海まで行こう。

無駄に待たせるわけにもいかないしな、

 はぁあ、愛七この状態を見たらなんて言うだろうか。

こんな状態で告白、できるだろうか。


 考えていても始まらない。

俺はハンドルを握った。









 

 























 









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公衆電話は愛せない ちぃーずまん @ayumu1572

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