思いと想い②

「今日、一緒に勉強せん?」


和也が僕の机に手をついて尋ねてきた。


「ええよ。」と二つ返事で返して、机の上の教科書を片づけ始める。


「場所はスチバでいいよな?」とまだ片づけれていない僕に急かすように言ってきた。


どうやら、一刻も早くスチバに行きたいらしい。


僕の答えは決まって


「いいよ。」





スチバは学生で列が出来ていた。


最近、発売されたストロベリーフラペチーノが人気なんだろうか?


と、勝手に考察をしつつ、自分の番になるまで待つ。


その間、和也はスチバの店内を見回し、何かを確認していた。


何を見ていたのかは分からなかったが、スチバには勉強という理由をつけて来たかっただけなのかもしれない。


そうこうしている間に列は進み、僕の前いる和也の番となった。


和也が受け取っていたコーヒーカップには


「いつもありがとうございます!」


と書かれていた。


ーーーーーー


「僕の人生には色がついていないな」とこんな風景を見ていると、思ってしまう。


だけど、取り繕うのがうまいせいなのか、僕がこんなことを思っているとは誰も知らないらしい。それは両親も例外ではなく。



色のない毎日が過ぎていく。




そんないつもの学校終わりの放課後に駐輪場で、60歳ぐらいの女性が掃除をしているのが目に入った。


同時に女性も僕の方を向き、目が合ってしまう。


少し気まずさを覚えたので、会釈をしようとすると、


「あなた、空っぽだね。」


と言われた。


突然のことで何を言われたのかが分からなくなり、「え?」としか言葉が出てこなかった。


「ごめんなさいね。私も初めてのことだったからつい、声に出しちゃった。」


申し訳なさそうに謝るその女性に何が初めてだったのかも問えず、怒ることもできないし、何を言えばいいのか分からなくて固まってしまう。


「本当にごめんなさいね。」


何度も謝りながら、気まずそうに離れて行った。


姿が見えなくなった後、


「そんなこと僕が一番わかってるよ。」


と力なくつぶやくことしか出来なかった。


自覚しているのと、人から言われるのでは全く違う。


自分に何もないことを今までよりも強く突きつけられる。


僕の苦悩とは関係なく、時間は変わらず、進んでいく。







そんなある日、和也が交通事故にあったと連絡を受けた。








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看取り師ー最後の想いを伝える者ー @mito3329

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