再会前夜の準備(はしゃぐお父さん)と奇跡(4)
「あなたがそうであったように、愛する人の幸せがあたしの幸せなの。ようやくあなたの夢が叶ったのだから、後ろめたさを感じないで。『自分だけ』って感じないで、何も迷わず心から楽しんで欲しい」
「……………………」
「あなたがこっちに来るのは、あなたがこっちで『やりたい』と思う事が全部なくなった時。そのあとなら大歓迎だけど、そうじゃないならお断り。絶対に会わないから、注意して頂戴ね?」
「…………最愛の人に拒絶されるのは、何よりの苦痛だ。君に嫌われないように、そうするよ」
ありがとう、レティリア。
急がず、リーズとディオンとの時間を楽しむよ。こちらの世界の思い出を、君へと届け続けるよ。
「はい、そうしてくださいね。これで、あたしも安心で――。なにも気にせず、あっちに戻れるわ」
彼女の体が清らかな光に包まれ、光の粒子を放つようになった。
「神様が、タイミングを図ってくれていたみたいね。ずっと言いたかった事を伝えられたし、こうしてお話しもできてよかったわ」
「わたしも、嬉しかったよ。#
「のんびりと、その時を待っているわ。リーズとディオンに、よろしくね」
「件のパーティーの際に、この話をするよ。その際に二人は話しかけるだろうから、よそ見はしないでくれ」
「勿論、絶対に聞き逃しはしないわよ。子供達の声を、楽しみにしてるわ」
これまでとは違う魅力を放つ、慈愛溢れる顔。母親の顔になって、紡ぎ終えると再び元の顔――妻としての、ひとりの女性としてのソレになった。
「あなた、上で見守っているわね。また会いましょ」
「ああっ。また会おう」
これは別れなのだけれど、さして寂しい別れではない。
昔からずっと繋がっていたわたし達は抱き締め合い、お互いが満面の笑みを浮かべたままで――。一夜の夢は、一旦の終わりを告げたのだった。
理不尽な婚約破棄をされた私を助けてくれた兄様は、隣国の王太子でした 柚木ゆず @yuzukiyuzu
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