第四章 河童の河太郎
暗い面持ちで、神社の階段を下りようとした夏海は、ポンと肩を叩かれ、驚いた顔で振り向いた。
そこには、白狐がいた。
「白狐さん…。」
悲しく見つめる夏海に、白狐は、頭を下げた。
「ごめん。嫌な思いをさせちまって。蛇美のヤツ…。」
「大丈夫よ。なんともないから。それより、白狐さん、蛇美さんを叱らないでね。優しくしてあげて。」
夏海の言葉に、白狐は、眉を寄せる。
「何だよ、それ。」
「蛇美さん、白狐さんのことが好きなのよ。」
「だから?」
冷たい目で無表情で呟いた白狐に、夏海は、呟いた。
「女性には、優しくするものよ。」
「俺は、蛇美のことなんて、何とも思ってないよ。」
吐き捨てるように、言った白狐に、夏海は、優しく微笑む。
「今夜は、招待してくれて、ありがとう。楽しかった。」
そこまで言うと、神社の階段を下りようとした夏海の手を止め、白狐は、言う。
「俺は、夏海が好きだ。夏海も俺のこと…好きなんじゃないの?」
その問いに、夏海は、振り向きもせず、呟く。
「…好きよ。大好き。」
「…嘘つき。」
白狐は、夏海の手を離すと、背を向けた。
「嘘じゃないわ。好きよ。」
「…もう、俺と会わないつもりだろ。」
それを聞き、夏海は、白狐の方を振り向いた。
「あたし達…しばらく、会わない方がいいと思うの。落ち着いたら、また、会いましょう?」
白狐は、しばらく黙っていたが静かに、口を開いた。
「そう言って、俺の側から離れるつもりだね?」
「ち、違うわ。」
「嘘つき…!約束したのに…嘘はつかないと。お前も、他の人間と同じだ!」
そこまで言うと、白狐は、ダッと、そこを駆けて行った。
「白狐さん!待って.........!」
追いかけようとして、夏海は、足を止めた。
冷たい夜風が吹き、眩しいぐらいの満月が空に輝いていた。
ー第四章 河童の河太郎【完】ー
見世物小屋の夜 こた神さま @kotakami
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