一期一会
幽美 有明
出会いと別れはまるで、移り変わる天気のように
一期一会なんて言葉がある。もとは茶道由来の言葉らしいけど。要約すれは、その時その出会いを大切になんてそんな感じの意味だったりした気がする。
出会いと別れは、身近なようで身近じゃない。人はその出会い気づくことができず、だから別れに気づくこともない。
でも私は、出会いと別れをそれなりの頻度で感じてる。それは現実じゃなくて、ゲームの中だけど。ゲームを通じた画面の向こうには実際に人が居て、今その瞬間にリアルタイムにつながってるんだ。そしてゲームが終わってしまえば、その関係性は終わる。ゲームをすることは、出会いと別れだ。
「よろしくお願いします」
私は対戦ゲームを好んでやる。それは何度も出会いと別れを繰り返すからなのかもしれないし。ゲームが楽しいからなのかもしれないし。本当のことはよくわからないけど、私はゲームをする。
「お疲れさまでした」
「おつかれー」
一つだけ、私がやってるゲームで対戦ゲームじゃないのがある。それはソシャゲで、対戦ゲームでもない。キャラを育成する、RPGに近いかもしれないし、シュミレーションゲームのような気もする。
でも変わらないことは、私はゲームを通じて誰かとつながってる事。違うことは、その関係性が長く続くことかもしれない。集団を組むことで、ゲームにおけるメリットが発生する。だからこそ、その場所に長く居座ることになるわけだけど。何もメリットはゲームに限った話ではなくて、チャットを通じて話ができることもメリットなんだと思う。ゲームの中という特殊な環境が、居心地のいいものだから。
私も一年近く居座っているし、話すことが楽しいと思う。そして話をする中で好きという感情が芽生えたりした。
もちろんそんなことは口にしない、口にすれば居心地が悪くなるかもしれないから。だからひそかに、気持ちを抱いて話をする。
「今日は大事な話があって、引退することにしたんだ」
それは唐突でいつかは必ず来るものだと私は知っていた。知っていたというのに、なぜか悲しくなった。それはもう好きな人に会えなくなるからなのか。そうかもしれないし、そうじゃ無いかもしれない。
でも、私に引き留めるこてゃできない。だってゲームだから。ゲーム上の関係性は酷く脆い。たとえいい雰囲気だったとしても、それが急に無になるほどに。ゲームに人を縛り付けることはできない。だってゲームを遊ぶかどうかの選択肢は、人が握ってるから。
「さみしくなりますね」
「そうだね、また別のゲームであったらよろしくね」
「その時はよろしくです」
出会いは、楽しく、嬉しい。別れは、寂しく、悲しい。心が動くほどの、出会いと別れを経験することは人生でそうあることじゃない。でも人は無数の出会いと別れを経験する。
すぐに忘れてしまうような、出会いでも。いつまでも思い出に残る別れでも。出会いと別れには違いない。すべての出会いと別れを意識することは難しい。でも少しだけでもいいから、出会いと別れを意識するだけでつまらない日常は楽しくなると思う。
「初めまして、よろしくお願いします」
一期一会 幽美 有明 @yuubiariake
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