第6話 証拠調べ

書記官「令和3年(家ホ)第107号」


甲裁判官「それでは、始めます。先日の和解期日の間で、出てきました準備書面と証拠ですが、本期日で陳述と採用とします。」

代理人ら「はい。」

甲裁判官「では、本日は、証拠調べという事で、原告と被告それぞれ、前にお並び下さい。」

甲裁判官「原告の佐藤さん。住所、氏名、生年月日は、書いて頂いたとおりですね。被告の佐藤さん。住所、氏名、生年月日は、書いて頂いたとおりですね。」

甲裁判官「では、ご本人として、これからお話をお聞きしますが、嘘、いつわりを述べますと、過料の制裁を受ける場合がありますので、注意して下さい。」

甲裁判官「それでは、お手元の、宣誓書を、それぞれご一緒に読み上げて下さい。」

書記官「起立」

佐藤夫婦 「宣誓 良心に従って真実を述べ、何事も隠さず、偽りを述べない旨を誓います。原告 佐藤由美 被告 佐藤克己。」

甲裁判官「では、原告からですので、被告の方は、当事者席か傍聴席に下がって下さい。原告の佐藤さん、これは録音してますので、会話が重ならないように、代理人の先生からの質問が終わってから、回答願います。では、原告代理人始めて下さい。」


証拠調べは、正直眠くなる。結果ベテランの裁判官ほど、寝ている気がする。刑事部の某裁判官は、証拠調べの際は、ほぼ100%寝ているのではないか。


甲裁判官も、正直うとうとすることは、あるが、寝ないように心がける。人間、興味がない事に関して、長々話を聞くと、眠くなるものだ。ましてや、やる気のない、尋問技術に疎い、弁護士に当たった日には、魔法を使っているのでは無いかと思うほど、眠くなる。

ラリホー弁護士はさておき、本件のような人事訴訟の離婚の場合は、当事者の思いもあり、決して寝ないようにする。


さて、原告の主尋問は、結婚当初の話から始まり、堅実な妻として家庭の役割を果たしたこと、子供は中学生で母親である自分と生活したいと希望していること。養育費についての希望。夫の不貞を疑った経緯。これをなじると暴力があったこと。スマホの証拠をつかんだ経緯。慰謝料についてと、一通りの尋問が行われ終了する。


反対尋問で、家事等についてきちんとしていたか等が聞かれ、次は、裁判官の補充質問となる。が、離婚の意思は固いようだし、特段質問はしないでおく。


甲裁判官「終わりました。それでは、お戻りください。」


離婚請求は、男女比較すると、女性からの訴えが圧倒的に多数である。統計を取ったわけではないが、話し合いでなく、裁判迄行われる女性の側から見た、離婚の理由は、主に3つである。


1つ目は、暴力(含む精神的)。2つ目は、浮気。3つ目は、お金である。

こう並べると、当たり前と思うが、面白いのは、このうち、一つだけが理由で離婚の裁判に迄至るケースは、滅多にない。大抵、この理由のうち、二つ、あるいは三つが重なる。裏を返せば、一つだけだと、女性は我慢するのである。


一方、男性は、二人の関係が原因となり、離婚請求が行われることは、基本ない。常に、第三者が加わる。例えば、親兄弟姉妹との折り合いの悪さ、外に好きな女性が出来た。基本このどちらかである。


そして、次に被告の尋問である。

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主文 原告と被告とを離婚する。 相 合唆 @ookuwa

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