宇宙船で幽霊出たらどこにも逃げれなくない?

ちびまるフォイ

いわくつきの船

「この宇宙船、出るらしいぞ」


「へ……変なこといわないでよ……」


「本当だって。俺そういうのわかるんだよ」


暗い宇宙をただよう宇宙船はいっそう暗い雰囲気に包まれた。


「まさかね……」


宇宙飛行士は誰も信じなかった。

そうすることで霊的な存在を消し去りたいと思っていた。


あるとき、ひとりの宇宙飛行士がふわふわ浮いているとき。

どこからか変な音が聞こえてくる。


「き、気のせいよ……。幽霊だとか入れ知恵されたから

 なんでもそんなふうに思えちゃうだけ……」


自分を納得させようとしたが、明らかに音はなっている。

絶えず鳴っている音を勘違いで片付けるにはあまりに無理があった。


怖がりの宇宙飛行士は全員を集めた。


「もう限界! 幽霊はいるのよ! 怖いわ!」


「ちくしょう、俺達がなにしたっていうんだ」


「ねぇ、地球から除霊グッズを送ってもらえないの?」


「それだ! 盛り塩のひとつでもできれば、撃退できるかもしれない!」


宇宙飛行士は地球との通信モニターの電源をいれた。


『はい、こちらピューストン宇宙センター』


「この宇宙船に幽霊がいるみたいなんだ!

 地球からの支給物資に除霊できそうなものを送ってくれ」


画面の向こうにいる管制官はぽかんとしたままで返事をしない。


「おい聞いているのか。除霊グッスを送ってくれって!」


そのまま通信が切れてしまった。

もう一度つなぎ直しても同じように相手の反応はない。


「くそどうなってる! こっちの声が届かないぞ!」


「幽霊のせいよ! きっと私達をここに閉じ込めるために通信をジャマしてるのよ!」


「聞いたことある……幽霊の多い場所では電子機器が壊れるって……」


地球からの支給物資が届くことはなく、

宇宙飛行士は姿の見えない幽霊におびえるだけの日々を過ごしていた。


日に日に霊的な現象はエスカレートしていく。


「誰もいないのに、壁の方からバンって音がしたのよ……」


「俺は天井からシューって変な音が聞こえたな……」


「このままじゃみんな呪われちゃうんじゃない……!?」


「何も悪いことしてないのに呪われるなんて!」


そのとき、通信用モニターの電源が急に入ったものだから

宇宙飛行士達は驚いて声をあげてしまった。


『こちらピューストン。聞こえますか』


「ああ、驚いた。なんだ管制からの通信か……」


『先生、どうぞ』


モニターの向こうではいつもの管制官ではなく、

首から大玉の数珠をぶらさげている男が映り込んだ。


「この人知ってるわ。有名な霊媒師よ! 除霊してくれるのね!」


『ムムム。見えます見えます……この世に未練を残したいくつもの霊が……!』


「お願いです! 早く除霊してください」


『では除霊します。かーーつ! 喝、喝、かぁーーつ!!』


霊媒師はハァハァと息を切らせている。

モニター向こうの管制官は心配になって声をかけた。


『大丈夫ですか? 除霊できました?』


『いやダメだ。やはりモニター越しでは除霊パワーが届かない』


「そんな! どうにかしてくださいよ!!」


『電子機器にも影響を与えるほどの力をもった悪霊だから、

 このまま野放しにしておくわけにはいかない。私も宇宙へ行こう』


通信はそこで途絶えてしまった。

これまで暗くなっていた宇宙船は一気に希望に包まれた。


「霊媒師がここへ来てくれるんだ!」

「これでもう幽霊騒動とはおさらばよ!」


霊媒師が直接来てくれるとわかれば、

もう多少の霊的な現象が起きても怖がることもなくなった。


シューという音が聞こえても、不意にバンと音が鳴っても

幽霊の最後のあがきだと流せるくらいの心の余裕ができていた。


「おい! あの宇宙ポッドじゃないか!?」


窓からは宇宙船に近づく宇宙船ポッドが見えた。

ポッドは宇宙船に取り付いてドッキングした。


「ああこれで解放される!」


宇宙飛行士たちは心から安堵した。

ドッキングのドアが開くと、助手と霊媒師がやってきた。

ふたりとも宇宙船の中なのに宇宙服を着込んでいた。


霊媒師は宇宙船を見渡した。


『強い未練を残した幽霊を感じます……!』


『先生、除霊をお願いします』


『わかりました、ではいきます。かーーつ! 喝、喝、かぁーーつ!!』


霊媒師が除霊すると、宇宙船の中にいたいくつもの悪霊は消えていった。

助手と霊媒師は手を合わせて祈った。


『寝ている間に壁に穴が空いて空気が漏れたようですね。かわいそうに……』


『さあ地球へ戻ろう』


霊媒師と助手は、宇宙飛行士たちの死体が浮かんだままの宇宙船を去った。

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