第8話 戦闘命令
大佐のテントに、バーニー少佐が入ってきた。
「司令部から攻撃命令がきました。」
准将の取り巻きの嫌がらせだということは、ピンときた。特に計画書はなく、攻めろとだけ。余計な指示がないだけ、ブラッドリーには、ありがたいことだった。少なからず、こうなることは予想の範疇にあった。
「司令部には、了解したと返信してくれ。」
「本当に戦うのですか?」
「3日後の13時に総攻撃を仕掛ける。詳しい作戦は追って指示をする。各隊に、連絡を入れてくれ。」
「はい。ただ。」
座った椅子から、戸惑うバーニーの顔を覗き込んだ。前回の敗戦が気になっているのだろう。
「真昼間なら敵は、小細工できないよ。」
シュナイダーは、敵の真意を計りかねていた。指揮系統が変わったことは、間者から報告があった。それに、はやくから、攻撃命令が出ていると、逆に勘繰りたくもなる。
「この命令は、フェイクなのか?それとも。」
とりあえず、警戒は怠らず作戦日まで待つしかなかった。
連合軍の大きなテントに各隊の小隊長が集まっていた。新兵ながら一人しかいないアーサーは作戦会議に参加した。初めに、ブラッドリーが簡単なあいさつをした。
「さて、本題に入ろう。作戦は簡単だ。総攻撃をかける。各隊の並びは、この通りだ。」
用意された電子黒板に、配置が映し出された。ほぼ横並びに配置されている。この体形から、扇形に展開して、敵を取り囲むように戦う作戦だった。
第三小隊のユーリ大尉が質問をした。
「全機出動して大丈夫ですか?」
「戦力の逐次投入は、愚の骨頂だ。こちらは、数の有利がある、それをいかすために全機で攻める。ただし、距離をとって戦い、敵を囲むように戦う。こちらに損害が出ない戦い方をしたい。」
基本的な説明が終わると、アーサーだけが呼び止められた。ブラッドリーは、シナプス少尉を椅子に座らせて、状況を確認した。
「どうかな、試作機は戦えるのか?」
「基本動作は、ほぼ大丈夫です。やはり、まだしっくりこないところがあって。」
「仕方がない、もう少し時間をあげたいが、そうも言っていられない。そして、頼みたいことがある。」
「なんでしょうか?」
そう言うと声をひそめて、アーサーに指示をあたえた。
「そういう状況ななれば、ということですね。」
「その通りだ。」
しっかりとした敬礼をして、アーサーはで実戦に備えるためシミュレーションシステムのところへ向かった。
「詳細な作戦に関する情報は得られなかったか。」
椅子に深く腰をかけ、前傾姿勢になって、シュナイダーは考えを整理していた。
連合軍の戦闘予告日は、明日に迫っていた。特に、ダミーやフェイクではないことは、敵の準備具合の報告で理解できた。向こうが先手の局面である、どんな手を打たれても対応できるようにするしかない。
「少佐は、紅茶がお好きと聞きまして、お持ちしました。」
気を利かせたシュワルツが、チタン製のマグカップに紅茶を入れてきてくれた。いつもなら、ブランデーを垂らして飲みことも多いが、今日のところは、やめておいた。
「今回も、バトルアーマーで出撃する。」
「またですか?」
「後の指揮は頼む。基本的な対処方法は、この端末に入れてある。それ以外は。」
「臨機応変にですね。」
「よくわかっている。君のような副官がいてくれると助かる。」
シュワルツは、頼られる嬉しさもあったが、留守を守る責任の重さも痛感していた。
ペガサスの翼(バトルアーマー戦記) 猫水 雷 @ellery11j
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ペガサスの翼(バトルアーマー戦記)の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます