君の愛が、理解できません！！

君の愛が、理解できません！！

「好きすぎる……」

　今朝もはよからベッドの上で、私の彼が私の胸（パジャマ越し）に顔を埋めている。

　それからとろんとした顔をして、私を見上げて唇を突き出している。

（えーとぉ）

　数秒悩んで、軽いキスをちょんちょんとしてやると、もう心底嬉しそうに私をハグする。

「愛してる……」

（いや、暑苦しいんだが、お前）

　こんな朝が、かれこれ３年続いている。

　３年！ここ重要！！

　この甘々な行為が、付き合いたてのバカップルじゃねえって所が超重要！！！

　毎日じゃないとはいえ、こやつはいつまで新鮮な気持ちを忘れないんだ！！！！

　例えば服を試着する。

「似合ってる？」と聞くと、「何を着てもかわいい」

　例えばご飯を食べに行く。

「美味しいね！」というと、「お前と食べてるからおいしい」

　例えば公園に行く。

「楽しいね」というと、「お前といるからもっと楽しい」

　……時々、本気で熱があるんじゃなかろうかと彼の額に手を当ててしまう。

　実は私、離婚歴がある。

　その人とはお付き合い期間がとても長く、出会って９年くらいで籍を入れ、その５年後に別れた。合計１４年の仲だったが、結婚をする前には向こうの熱は冷めていた。

　私の何が良くて選んだのか聞いても「さあ？」

　私の顔はかわいいか聞くと「ブスではないけどかわいくもない」

　そして必ず言われる「付き合いが長いから何も思わない」

　それが原因で離婚したわけではない。むしろ、この点においては元旦那が普通の感覚じゃないかと思う。

　彼は、客観的に見て間違いなくカッコいい。

　すらっと背が高くて、手足がほっそりしていて、俳優になったらオジ好きに人気だろうなっていう渋い顔をしている。おなかがぽっこりしているのが残念だけど、それがなければモデル事務所にシニアモデルとして売り込みたいくらい。――だから、私がカッコいいという分には誰も反論はないと思うんだ。

　その横を歩く太ったホルスタイン（私）を「かわいい」という彼が信じられんのだ。しかもあんた、つるぺた属性じゃん！好みからずれてるのに「愛してる」ってどういう事！

　この３年、めっちゃ悩んだ。

　めっちゃ抵抗した。

　めっちゃ訂正した。

　でもなんか、私の方が間違っている気がしてきた。

　あの言葉は、彼にとってそのままなんだ。

　私の思う『愛』だの『かわいい』だのとは違うんだ。

　私には理解できない、だけど好意的な反応が彼の中では起きているんだ。

　――なら、それでいいんじゃね？理解する必要なくね？

　うん問題解決。放置でOK。

　それでも幸せそうにハグしてくる彼に、今でも慣れない。

　心の底から甘えてくる彼が、ちょっと奇妙でこそばゆい。

　それに私はかなりのボッチ属性だ、一人が一番楽な人間だ。

　だからそのぅ、もうちょっと距離を置いてくれないかな？

　そういうお願いをしたら、悲しそうな顔するのやめてくんないかな？

　私は私なりに、君を大切に思っているんだからね？

　……あ、無理？　さいですか。