第67話「エピローグ」
さて、その後の話をしよう。
再び恋人となって居酒屋に戻った俺たちを、みんなは大喝采で迎えてくれた。
手が叩かれ、口笛が吹かれ、いつの間に用意したのかクラッカーまで鳴らされた。
「ほらほら、みんなにごめんなさいは? 心配かけてすいませんでしたは?」
腕組みしたちひろが偉そうに言ってくるのに渚ちゃんは。
「ご心配をおかけして申し訳ありません」
素直に頭を下げたかと思うと、ちろりいたずらっぽく舌を覗かせた。
「独り身の方も多い中、わたしたちだけが幸せになってしまってすいません」
「「「「「「「なっ……!!!?」」」」」」」
いきなりの煽り爆弾投下に、十数人いた独り身勢は激怒した。
「ほおおおおおー!? 言うじゃないあんた! 言っとくけど今日は朝までコースだからね! ふたり仲良くお手々繋いで帰れるとか思わないように! 店員さーん! 焼酎ボトルで持って来て!」
ちひろは顔を真っ赤にして店員を呼び。
「ほほう……貴様、禁忌に触れてしまったようだな。たかが人間如きが、我ら闇の魔女が護り受け継ぎし太古の封印に触れるなど、それなりの覚悟を持ってやっているのだろうな?(人の古傷を剥がすような真似をして、わかっているのでしょうね? わたしはぷんぷんですよ?)」
ルーが顔を青ざめさせ、震え声で中二病言語を発し。
「ひゅうーっ、お姉ちゃんやるうーっ。いいぞいいぞもっと煽れーいっ」
杏ちゃんが無責任に
「杏ちゃんやめてっ、渚ちゃんもちょっと落ち着いてっ」
俺はなんとか止めようとするのだが、しかし渚ちゃんはニッコリニコニコ。
「あら、わたしは落ち着いていますよ? その上で、幸薄そうなみなさんに幸せをおすそ分けしてあげてるだけです」
この一言がとどめだった。
「「「「「「「はあああああーっ!?」」」」」」」
騒然となったみんなが、凄い勢いで俺たちに向かって押し寄せた。
「ちょ、ちょっと待ったみんな話せばわかる! だから殴ったり蹴ったりは……ってなんでみんなこっちに来るの!? 俺は別に何もしてないんだが!?」
「まあ、こういった時はえてして男性が標的になるものですし」
なぜかもみくちゃにされている俺に、渚ちゃんは平然と。
「大事な彼女の危機なんだから、彼氏には体を張ってもらわないと」
「男女平等精神って大事だよなと思うんだけどおー!? てか痛い! マジで痛い助けてヘルプミー!」
「うふふふふっ、先輩面白い顔っ」
「なんで渚ちゃんそんなに嬉しそうなの……ってもしかしてこれって報復行為!? 5年も放っておいたからその罰として!?」
「さあ~て、どうですかねえ~?」
渚ちゃんはいたずらっぽく微笑むと、俺からさっと距離を離した。
「大丈夫です、ケガしたらわたしが誠心誠意お世話しますから。幸い今日は救急セットも持って来てますし」
「それはそれで嬉しいような嬉しくないようなーっ!? てか君どんだけ準備がいいのーっ!?」
みんなにもみくちゃにされながら悲鳴を上げる俺を、渚ちゃんは楽しそうに眺め続けた。
まな尻を下げ、頬を緩めたその表情は実に実に幸せそうで――だからまあ、これぐらいの痛みには耐えてみせようか……ってそんないい話風に終われるかあああーっ!
「おのれえぇぇぇぇ渚ちゃん! この埋め合わせは必ずしてもらうからなあーっ!?」
「はい! 喜んで!」
俺の怨み節に、しかし渚ちゃんは満面の笑顔で。
「全身全霊をかけて、愛して差し上げます!」
絶賛同窓会開催中の居酒屋の真ん中で、これ以上ないほど純粋な、愛の言葉を叫んでくれた。
それはかつての俺が望んでも得られなかった、彼女の気持ちの芯から生じた告白でもあり――だからまあ、これぐらいの痛みには耐えてみせようか……っていい感じに締めたり出来るかこのうああああああああめっちゃ痛ええええええーっ!?
~~~Fin~~~
「ツンツン風紀委員ちゃんが実はデレデレ風紀委員ちゃんだったって話をする」 呑竜 @donryu96
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