ライブ、失敗?

夏伐

ライブ、失敗?

 俺と同じ方向に向かっているやつのファッションをチェックする。


 一見そのTシャツは、オシャレな意味をなさないようなロゴに見える。だが、俺の目には一目で仲間と分かるバンドTシャツだ。


 もちろん俺も着ている。


 俺の推しは最近地下活動からメジャーに移行しはじめたバンドグループ。それも女だけで構成されている。


 今回いくライブは「女祭り!」と題して女性ミュージシャンばかりが出演する。


 そこに箱推ししているバンドが参加するのだ。おかげで俺は無理に有休をとってしまい同僚に恨まれてしまった。


 ライブ会場につくと、会場は熱気であふれていた。


 やはり生演奏は違うよな、と出ていた屋台でビールを買った。


 最高だ。


 俺は今、最高に充実している。


 その場のノリもあって、様々なバンドやアーティストの音楽が全て楽しい。誰かも知らない隣のやつも、俺からずっと離れている最前列のやつも、全員が一体となって会場を作っている。


 今が一生続けばいいのに。そう思ってしまうくらいだ。


 最後にゲストが登場する、誰が登場するのかは知らされていない。


「それでは最後にこの女祭り!ライブを企画してくれた偉大なアーティストに登場してもらいましょう!」


 スモークの中から現れたのは、超有名で、俺も大好きな曲のアーティストだった。でも男。


 俺が戸惑っている間に曲が始まり、会場は盛り上がる。俺もテンションを上げて歓声をあげた。


 帰りにまたビールを購入してゴブゴブと飲み干した。


 電車の中で、疲れながらも考えてしまう。でも男。


 家に帰り風呂の中でも考えてしまう。でも男。


 夜ベッドで横になり俺は思った。「初めての女祭り!」というこのライブ、最後に男でてたじゃん。別にいいよ。でもコンセプトと違うじゃん。


 このライブは成功でいいの? ダメじゃない?


 翌日、推しのバンドのTwitterが更新されていた。


『女祭り!大成功だった!』


 俺はいいね、とリツイートを押した。


 そうか、あなたが成功だというのなら大成功です! すべての疑念は払しょくされた。

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