番外編
ヒロイン編
離れていくヴォルフと悪役令嬢の姿を見て唇を噛んだ。
またフラれてしまった。
どうして、どうしてよ。
なんで上手くいかないの!
ここは乙女ゲームの世界でヒロインは私なのよ!
途中まではちゃんと攻略者たちに愛されていた。
幸せだったのに!
「なんで悪役令嬢とくっ付くのよ!」
テオもフォルカーもゴットもヴィルマーも、ヴォルフまで私を捨てて悪役令嬢とくっ付いてしまった。
訳が分からない。どうしてなのよ。
「私は愛されるべきなのよ!愛されるために存在しているの!」
そうよ。これはきっとバグなのよ。
じゃあ、リセットしないと。
リセットボタンはどこにあるの?
「探さなきゃ」
学園が舞台だもの。きっと学園にあるわよ。
そう思って探し始めるけど、見つからない。
テオから告白される予定だった噴水に向かうとテオとテオルートの悪役令嬢が仲睦まじそうにしていた。
ふざけないでよ!
悪役令嬢に向かって石を投げるとそれを止めたのはテオだった。
「アメリー、なにをしている!」
なんでよ、どうして私を睨むのよ!
悪役令嬢を庇うように立っているのよ!
怖くなって逃げ出した。
次に向かったのは図書室だった。
本来ならフォルカーに告白されるはずだった場所。
それなのにフォルカーは悪役令嬢と仲良さそうに本を眺めていた。
ムカついて、悪役令嬢に向かって本を投げる。
だが、当たったのはフォルカーだった。
「アメリー。僕の大切なアンを傷つけようとしたな?」
なんで、また睨まれてるの。
悪いのはそっちなのよ?
また逃げ出した。
辿り着いたのは鍛錬場。
ゴットがいた。悪役令嬢と一緒に剣を振っている。
「ふざけないでよ!」
なんでどいつもこいつも、私じゃなくて悪役令嬢と楽しそうにしてるの!
私の声に気がついたゴットは私を睨み付けた。
「まだなにか用があるのか?レオニーを傷付けるなら斬り捨てるぞ」
「ないわよ!」
そう言って逃げ出した。
教室に戻ると今度はヴィルマーが悪役令嬢と仲良さそうに商売の話をしていた。
なんなのよ、なんなのよ!この世界は!
「ヴィルマー!」
思わず攻略者の名前を叫んでいた。
目を覚ましてほしくて、貴方に愛されるべきは私だと思い出してほしくて叫んだ。
「ティーナ、邪魔が入りそうだ。帰ろう」
「え、えぇ…」
焦った顔をする悪役令嬢の手を取って逃げ出すヴィルマー。それを追いかけた。
許さない。
許さない。
許さない。
二人の姿を見失った頃、中庭に着いた。
そこにはヴォルフと悪役令嬢の姿があった。
ぷつんと頭の中の何かが切れる音がした。
リセットボタンがないなら。
私を愛してくれる人がいないなら。
私を馬鹿にしたやつ全員を殺してしまえ。
「死ねぇぇ!」
護身用に持たされていたナイフを取り出し悪役令嬢に向かって走る。
あと少しで殺せる…はずだったのに私は地面に転がっていた。
「お前、何をしようとした?」
冷たく睨むヴォルフ。
どうしてよ。
なにがいけなかったの?
愛されようとしただけなのに?
「私はヒロインなのよ…」
そう呟いて、私は意識を失った。
目が覚めると知らない森の中にいた。
そして目の前には巨大な魔物。
これはヴォルフルートの悪役令嬢の末路…。
「私はヒロインなのにぃぃ!!」
攻略対象は自分ルートの悪役令嬢に振り回される 高萩 @Takahagi_076
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