後編
エルフリーデの弟に俺の浮気がバレてしまい婚約を解消される事になるかと思ったが、そうはならなかった。流石に名門侯爵家といっても国の為の婚約を消せるわけがない。
それに安心してしまった自分が最低だと思う。
「エルフリーデ」
一ヶ月も逃げ続けていたエルフリーデは簡単に捕まってくれた。
「何ですか?」
相変わらず冷たい視線を向けられたままだが仕方ない。
「許してくれ」
一国の王子が侯爵令嬢に頭を下げる。
これがどれだけ重いことか分かっているつもりだ。
それでも男として謝りたかった。
「ヴォルフ様、私…」
「あっ、ヴォルフ~!」
せっかくエルフリーデが話そうとしてくれていたのに。
邪魔をしたアメリーを睨んだ。
「な、なに怖い顔してるの?」
「今は大切な話の最中だ。それと俺を気安く呼ぶな」
「は?」
一瞬呆けた後、悪魔のような表情を変わるアメリーに俺は自分が情けなくなる。
こんなのを可愛いと思っていたのか。
「ふざけないで!悪役令嬢と話すことなんてないでしょ!」
「悪役令嬢だと…」
「そ、そうよ。そこの悪役令嬢はヴォルフに捨てられて、森の中で魔物に殺されるのよ!」
俺のエルフリーデを馬鹿にしたな?
「消えろ」
「そ、そうよ。消えなさ」
「お前が消えろ。今ならまだ命は取らないでおいてやる」
本当は許せない。殺してやりたい。
だが、全てをこの女に押し付けてしまうのは無理だ。俺も悪い部分があったからな。
「なんで!なんで上手くいかないのよ!どうしてよ!私はヒロインなのに!」
訳の分からないことを叫び、地面を踏みつけるアメリーを置いて、エルフリーデを中庭まで連れていく。
「エルフリーデ、本当にすま…」
「謝らないでください。悪いのは私も同じです」
私の唇を指で押さえつけ、話せないようにするエルフリーデ。
どうして申し訳なさそうな顔をする。
「貴方が他の方と仲良くしている姿を見て、嫉妬していたのです」
恥ずかしそうに言う姿は可愛らしい。
美しいだけじゃなく可愛さもあるとは…。
「私は幼い頃から君が好きだ。だから久しぶりに会って綺麗になった君を見て、恥ずかしくなって…」
「それが私を避けていた理由ですか?」
小さく笑うエルフリーデ。
「馬鹿ですね。私はヴォルフ様に好かれたいが為に綺麗になる努力をしたのに貴方が見てくれないと意味がないじゃないですか」
可笑しそうに目を細める。
俺は本当に馬鹿だ。
どうして、そんな大切な事に気が付けなかったんだ。
「エルフリーデ。私と結婚してくれるか?」
「私だけを見ていてくれるなら喜んで」
「あぁ、君だけを見ていると約束しよう」
どうか俺の隣で綺麗になっていってくれ。
~ fin ~
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