中編
あれから一週間もエルフリーデとは会えてない。
「何で…」
まるで数ヶ月前までと一緒だ。
会いたいのに会えない。今は会おうと思ったら会える距離にいるはずなのに。
「完全に俺のせいだよな」
成長したエルフリーデに照れて、話せなくて、アメリーという女の子に逃げてしまった俺が悪い。
謝らないといけない。
「許してくれるだろうか」
情けない声が漏れ出た。
いや、許してもらわないといけないな。
この婚約は国同士の取り決めなのだから彼女だって分かってくれるだろう。
「エルフリーデを探すか」
そう思って、学園を見て回るがいない。
校内にはいるはずなのに会えない。
「いた…」
ようやく見つけたエルフリーデは俺の知らない男と楽しそうに話していた。
どういうことだ。それは誰だ。
俺のことは無視していたのに…。
ムカつく。イライラする。悲しい。
「エルフリーデ!」
思わず飛び出すと驚いた顔をする二人。
寄り添い合うようにしているのが腹立たしい。
「浮気か?」
思わずそんな事を聞けば驚きの表情は険しいものに変わっていく。
「誰か貴方のようなことをすると?」
「は?」
今度は私が驚かされる。そして、エルフリーデの肩を抱く男はありえないって表情を俺に向けた。
「私の弟ですよ。貴方はほとんど会ったことがないので忘れてしまっていても無理ありませんが」
吐き捨てられるように言われた言葉。
弟。
家族なのか。
確かに髪色も瞳の色もエルフリーデとよく似ている。冷静に考えれば分かったことだ。
「姉様。どういう事ですか?」
「ヴォルフ様は他の方に懸想されているみたいなの。この前も今の私達ように身を寄せ合っていたわ」
「ちがっ…」
あれは勝手にアメリーがくっ付いてきただけだ。
私は振り払おうとしていた。
「どういう事ですか、殿下」
睨み付けてくるエルフリーデの弟。
背中に冷たい汗が流れる。
「良いのよ。私達の婚約なんて国が決めたものだもの」
「でも…」
「最初から愛なんて存在してなかったのよ」
エルフリーデは一度こちらを睨み付けた後、背中を向ける。
「行きましょう。時間の無駄だわ」
弟の腕を取り歩き始めるエルフリーデ。
どうしてこんな事になってしまったんだ…。
愛なんて存在しないだと。
そんな事はない。
俺はずっと小さい頃からエルフリーデだけが…。
「好きだったんだ」
今更、口に出しても遅い。
遅いと分かっている。
それでも彼女にはこの想いを伝えたいし、知ってほしい。
「何度でも言うから…」
どうか俺を許してくれ。そして愛してくれ。
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