隣国王子編
前編
俺の名前はヴォルフガング・フォン・ヴァルモーデンだ。
ヴァルモーデン王国の王太子。
俺には幼い頃より決められた婚約者がいる。
名前はエルフリーデ・フォン・クルーゲ。
隣国の侯爵令嬢だ。
ただ俺達の婚約は国同士の繋がりを強くするための契約のようなもの。
俺達が会うのは二年に一回だけだった。
それでも会うのが楽しみで、手紙を貰えるのが嬉しかった。
隣国の学園に留学することが決まり、二年ぶりに会ったエルフリーデは見惚れてしまうほど美人になっていた。だからなのか会うのが気恥ずかしかった。
気がつけば俺はエルフリーデとは違ったタイプの可愛らしい女の子とよく話すようになっていた。
名前はアメリー。平民の女の子らしい。
アメリーと話すのは落ち着く。
だから彼女に親しげにされても何も言わなかった。
「ヴォルフ~」
だが、これはないだろう。
ベタベタと男に体にくっ付くとか普通の女の子ならしない。平民だとしてもそれくらいは分かるだろう。常識がないのか。
「あまりくっ付くな」
手を振り払うと余計にくっ付いてきて、それが余計にムカつく。
こいつは何をされても許されると思っているのか?
俺だってやられると不愉快なことくらいあるぞ。
「くっ付くな」
「なんでよ~、良いじゃない」
イライラする。
エルフリーデだったらこんな事はしないのに。
彼女はいつも優しく俺を見守るだけだった。
エルフリーデに会いたいな。
「楽しそうですね」
願ったせいなのか、会いたい人の声が聞こえてくる。
振り向けば、エルフリーデが冷やかな視線を送っていた。その視線の先には俺にくっ付くアメリー。
この状況は不味い…。
「エルフリーデ…」
呆れたような顔を向けてた後、彼女は何も言わずにさっさと立ち去ってしまう。
「はは、あの顔見た?」
追いかけないといけないのにアメリーは離れてくれない。
それどころが今の光景を愉快だと笑っている。
こいつ、頭がおかしいんじゃないのか。
「離せ」
冷たく言い放って、力を込めて手を振り払う。
女の子に乱暴なことはしたくなかったが、仕方ない。離せと言っても離さないアメリーが悪いのだ。
そんなことより早くエルフリーデを追いかけないと。
「ちょっと!待ってよ!」
薄汚く声を上げてくるアメリーを無視して、エルフリーデが去って行った方に走るが彼女は見つからない。
「くそ、エルフリーデ!」
他の女の子と仲良くしていたのは悪かった。
でも、だからといって、あんな冷たい目で見ることはないだろ。
「とりあえず話をしないと」
学園中を探してみたが、既に帰っていたようで彼女には会うことができなかった。
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