第二話 〜深謝〜
桜咲の伯父さんと祖母が持ってきた荷物を入れ終えると、八畳二間の大部屋の一角が埋まる
大部屋のそれぞれ中央には二畳ほどの和風座卓が置かれており、敷居の襖は親戚が集まる事を踏まえて前もって取り払っていた
取り払った襖は邪魔になるので〝あの〟窓のない部屋に仕舞っている
今ではすっかり倉庫代わりだ
荷物を運び終えた
「ピンポーン」
再びチャイムの音が鳴り響いた
それを見た瞬間に
動悸が早くなるのを感じながら、自分ではどうする事も出来ない息苦しさから意識が薄れその場に倒れ込むのだった…
しばらくして…
目が覚めた
「
そう問いかける桜咲さんを見ながら、少し気持ちを落ち着かせながら
「はい、今は特に何も…大丈夫、、、だと思います」
そう答えたが、未だにマラソン後の様な胸の息苦しさがずっと残っていた…
その様子を伺うように部屋の隅で、申し訳なさそうに座る女性の姿が見える…
〝さっきの女性だ〟と一瞬身構えたが…
よく見るとさっき感じた目付きの悪さとは裏腹に、白髪が目立つ優しいおばあちゃんの印象が強い
そんな様子を見ていたからか、
そんな表情が和らいだ
「あなたが、、
その元気そうな表情とは裏腹に細々とした声で話しかける
それを聞きながら
「はい…」
そう呟く様に返事をする
それを聞いた瞬間だった!目の前にいた女性は額を畳に強く当てて
「本当に申し訳ない事をしました
そう謝罪を始めたのだ
何がなんだか理解が及ばない顔をする
「この人は君の父、
それを聞いて理解はしていたが、それでもそれが嘘であってほしいと言わんばかり
「それって…」
そう
しかし時に
「君の二番目に身元引き受け人となった、あの叔父さん夫婦の〝妻方の母〟にあたる方だよ」
そう告げた桜咲さんの一言に
それでもどうにか飲み込む様に息を整えた
「それで…〝あの人の親〟がなんの様で僕に」
そう聞いた
それを見た女性は一度は
「本当に、本当に申し訳ないことをした
許して貰えるとはつゆほども思っていない!
それでも牢屋にいる
そう謝罪する姿を見ていた
全身弱々しい細身に白髪の生えたその
そんな姿を見た
「頭を上げてください」
そんなとても優しい口調と声色で
そこには怒りも恐れも無くただ〝申し訳ない気持ち〟があった
『自分はこんな弱々しいお婆さんに、必死に謝らせて何をしてるのだろう…』そんな思いが頭を駆け巡る中、顔を上げたお婆さんは涙を流しながら
「本当に申し訳ない」
そう何度も謝罪する
それに対してお婆さんも一言
「ありがとう」
そう言いながら噛み締める様に手を握りながら頭を下げるのだった
運命を変える者たち 紳羅 @shinra08
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