第三節 訪問者

第一話 〜来訪〜

二〇四五年七月二十七日木曜日


今日は太陽そらの両親が亡くなった命日の前日である…

あれから早いもので、もう七年という月日が移ろっていた

そんな太陽そらは朝から両親が眠る仏壇のある部屋で挨拶を終えると、忙しそうに親戚を持てなす準備を始める


一切の音沙汰が無かった親戚がこうして集まり、明日の命日をしのぶというのは今回が初めてである

太陽そら自身、内心は親戚を持てなす準備をしながらも〝どこか上の空〟であるのはその為だろう




そんな準備も終えて一息ついた太陽そらがふとリビングにある時計を見上げると、時刻はすでに十一時半を回っていた

そんな横で一緒のタイミングで見上げていたのか桜咲さんが


「もうすぐお昼になるな」


そう溢した瞬間だった


「ピンポーン」


チャイムの音が家に鳴り響く

その音に一瞬、太陽そらは体をビクつかせるが、それを見ていた桜咲さんが


「時間よりも結構早いな…一緒に出迎えに行こうか」


そう言いながらニコリと笑う姿に一つ頷くと、太陽そらは桜咲さんと一緒に玄関へ親戚を出迎えに行った




玄関を開けた先に立っていたのは、若く見えるが年配の優しそうな女性一人と、その人より若そうな夫婦だった

その内の一人である小太りの男性が、桜咲さんを見た瞬間


「久しいな海晴かいせい、元気にしてたか?

いゃまぁしかし、お前さんが人の面倒見てるなんて…成長したもんだなぁ」


そう呟き出てもいない涙を拭う仕草をしながら〝うんうん〟と頷いて挨拶をする

その発言を聞いていた、隣の清楚そうな女性がじっと小太りの男性を見ながら


「何言ってるんですかあなた、海晴かいせいちゃんも、もういい歳なんですよ」


そう言いながら桜咲さんの事を〝ちゃん〟付けで呼びなからツッコミを入れる

それに対して桜咲さんは


「ほっとけよな!てか早すぎだろ来るの!

確か到着は十三時頃じゃ無かったか?

まだ十一時半なんだけど!!」


と呆れ気味で答える

すると小太りの男性は


「いや〜久しぶりに顔を見ときたくてな!

少し張り切ってしまったんだよ!ハハハ」


と仲の良さげな雰囲気で話をする

その姿に太陽そらは桜咲さんに


「知り合いですか?」


と聞くと桜咲さんはハッと我に返ったのか一言


「あぁ両親だよ、俺の…」


とだけ答えるのを聞いて、太陽そらは妙に納得しながら


「そうなんですね…見た目が若そうだったのですが、雰囲気が似てたので、もしかしてとは思いましたが…」


と答える

その姿を見ていた小太りの男性は


太陽そらくんも大きくなって、うちの海晴かいせいとも仲良くしてくれてありがとぉな!」


と気さくな感じにお礼をする

そんな中、後ろにいた年配の優しそうな女性が


「本当に大きくなって…」


そう溢し太陽そらの目線に合わせて少ししゃがみながら、右手で肩に手を置き泣きそうな表情を浮かべる

どうやらこの人達、母方の実家にあたる〝桜咲家〟の伯父さん夫婦とその母親、つまり太陽そら自身にとって母方の祖母に当たる人らしい




そんな桜咲の伯父さん夫婦と祖母は玄関での立ち話が疲れたのか、桜咲さんに目線を配る

それでも気づかない鈍感な桜咲さんに、桜咲の伯父さんが


「それより上がってもいいか?

親戚が集まるってんで色々持ってきててな!」


そう言いながら両手や車に積まれた荷物に目を向けた

それに対して太陽そら


「あ!気づかずにすみません!

手伝いますね!」


と言いながら荷物の運び入れを手伝う

桜咲さんもそれを聞いてようやく三人の目線に気がついたのか


「そうだな、一緒に手伝うか太陽そら


と答えながら、ひとまず一階奥の大広間へと誘導しながら荷物を中に入れていった

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