光と影が交差する物語

物語の各所に散りばめられた小ネタ、時に漫才を見ているかのような小気味良い会話に、よく笑っています。
しかし、笑顔だけでは終わりません。そもそも主人公の大地くん――彼の人生がなかなかにハードなので、笑ってばかりいられないのは当然の事です。

物語開始時点で、既に天涯孤独らしい男子高校生。彼は学校で親友のヤスと漫才みたいなやりとりをしていて、明るい少年にも見えます。
けれどその「光」の部分はほんの僅かで、彼の背負う「影」を照らしきるには至りません。

まず、ヤスとは明るく接しているように見えますが、他の人物に対しては恐ろしいほど興味がないのです。
「好きの反対は嫌いではなく無関心」とはよく言ったもので、どこか冷徹に見えるほど他人に興味がありません。もしかすると、興味がないのは人だけでなく、ありとあらゆる事象についてそうだったのかも……。

そんな大地くんを「救う」べく現れたのが、謎の小学生ちゃん。
大地くんは初対面と認識していますが、彼女の方は大地くんをよく知っているようで――しかも、謎に好感度が高いです。
これは、グイグイ来る謎の押しかけ女房に戸惑いながら、彼女の抱える謎を紐解きながら、大地くんが幸せへと至る物語。

きっと、大地くんの一人称視点だからこその謎も多いでしょう。
彼は、彼自身が見聞きした事、限られた情報のみを精査して、正解を導き出さなければならないのです。
こんな事を言ってしまえば本末転倒ですが、彼らを「小説の登場人物だ」と思っているのは私達だけです。彼らは彼らの現実を生きているため(例え読者が早い段階で「ヒロインの正体は、もしや……」なんて察したとしても)、現実として起こり得ない事には、そう簡単に思い至らないものです。
だからこその生々しさと言うか、妙にリアルを感じるお話なんですよね。人の感情の機微、その動き方なんてまさにそうです。

周りの仲間達に助けられながら、謎や困難に挑んでいく大地くんを見ていると、まるで我が子を見守っているような思いにさせられます(笑)
タイトルに入っているぐらいだから、ハッピーになるのだけは間違いありません。ただ、どんなハッピーを迎えるのか……どうやってハッピーになって行くのか?
これからも、楽しく考察しながら見届けたいと思います。

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