第6話


私の死んだ次の日、朝のHRは沈んでいた。


私の机には花が置いてあり、私と仲が良かった友達が涙を流している。


稔くんは、無表情だった。


私が死んでも、涙ひとつ流してくれないの? と思って、ちょっと悲しくなった。だけど、まぁそんなもんだよね。


私と稔くんは、幼馴染だけど、関わりだしたのは高校に入ってからだ。


付き合いが長いわけでもない。


ため息が出るような反応だったが、仕方ないのかもしれない。


放課後になると、誰もいなくなった教室に稔くんの姿があった。


あかね色の夕日が照りつける中、稔くんは私の机の前で棒立ちしていた。



「なんで…なんで昨日、別々に帰ったりなんかしたんだよ」



回り込んで、稔くんの目の前に立つ。


稔くんは、大粒の涙を流していた。



「くそ、くそっ…」



私が死んだ日、私と稔くんは別々に下校した。


稔くんはそれを悔やんでいるみたいだ。


もしかしたら、稔くんがいたら、私が助かっていたかもしれない。彼はそう思って…。


そう思ってくれるだけでも、なんだか嬉しいな。



「ごめんね稔くん、私、死んじゃったよ」



話しかけても、稔くんにその声は届かない。姿だって見えない。


そりゃそうだ。私は死者なのだから。


でも、例えこの声が届かなくても、例え返事がなくても、私は構わない。



「私、稔くんのことが好きだよ。稔くんはどうかな? 私のこと、好き? もし好きだったら、嬉しいかな。でも、私は死んじゃったから、優しい彼女でも見っけて、さっさと幸せになれよ、バカヤロー!」



そう叫んで、私は稔くんの最後の表情をうかがった。


ひどく悲しんでる顔だ。欲を言うなら、笑っている顔を最後に見たかったかな…。でも、それは贅沢だよね。





高校に進学して約半年。モミジやイチョウの葉が完全に色づいた10月という季節に、私は好きな人に告白をした。




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amore mio 有栖川 天子 @yozakurareise

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