魔法使いのお姫様は何度仕事をバックレてもめげない 

てhand

第1話 宮殿を出て初面接の事務所前まで

私の名前はハルカ・アンスティーン。身長は175cm、体重は基本55kgだが、変身魔法によって変えることができ、胸のサイズはFカップ、金髪のきれいな長髪だ。


パワーフォルムは、運動や肉体労働をする時に用いる。少し筋肉質で猫背になるがマッチョというほどではないが、人並みの男性くらいにはなる。体重で言えば70kgだ。


もう一つがサービスフォルム。こちらは体重が50kgで背筋が伸びていて脚が少し長くなりスレンダーな美女という状態だ。実際の私より少しスリムになっている。


老けない魔法をかけられたことにより、見た目は永遠の20歳であるのだ。


小さな時から木登りが好きだったり海にキャンプに行くのが好きだったりと活発な女の子だったこともあり、運動自体は嫌いではないし、勉強なども一度教えられればすぐに覚えることができた。

性格も初見で見るとかなり明るい。


しかし、そんな完璧に見える品のあるお姫様にも社会性という欠点が気になったようだ。


人に見られている場所では品が振る舞いができるのに、何事もすぐに出来てしまうあるいは先が読めてしまうからか、興味を持ったこと以外の諦め癖辞め癖が酷いのである。


「将来お姫様としてこの王国を支えるためには、社会性が必要なのです。ですから、一度宮殿を出て働かせてください。」

 

とハルカは突然申し出た。大学を卒業したけじめもあるのだろう。

王様で父のハルオ・アンスティーンは、心配をしつつも、その挑戦を快く受け入れた。


「ハルカ、将来のためにたくさん学ぶのだぞ。家はこちらが用意するから職は自分で探すのだぞ。」


そう述べた王様は、家を築50年の古いアパートに設定し、手続きを部下にとらせた。


ハルカは、そう述べた3日後に宮殿を出た。出る時には宮殿の職員が総出で門出の祝福というか検討を祈って見送ってくれたのだ。


そして、これから住むアパートに朝10時頃ついた。原則仕送りはなしで、手元には500万円を用意してもらった。アパートの家賃は5万円。


「ここが私の住むアパートなのですね。家賃を自分で賄えるように頑張りましょう。早速仕事を探すためにどこかに連絡を取りますか。」


最初に目に入ったのは何と鉄筋屋の高速道路建設の仕事だった。

一度目に入ったらすぐに興味を持ってしまう私は、求人を出しているテッキング株式会社にすぐ電話をかけた。人生で初めて外部の人と電話をするため、5分くらい考え事をした後電話を掛けた。


「もしもしテッキング株式会社様ですか?」


事務員「はい。そうです。」


「求人を出している高速道路建設の仕事に応募したくお電話させていただきました。」


「氏名年齢性別を教えてください。」


「ハルカ・アンスティーン。22歳女性です。」


「分かりました。面接はいつに致しましょうか。」


「今日の夕方16時で宜しいでしょうか。」


「宜しいです。では、履歴書と印鑑をお持ちください。お待ちしています。」


「分かりました。よろしくお願いします。失礼します。」


短いやり取りであったが、会話として成立していたと感じた。

次へのステップは履歴書である。しかも、面接まで5時間30分くらいしかないではないか? 

スマホで履歴書がどこに売っているか検索した。

何せこの世界の常識をあまり知らないのである。

結局、履歴書を買いにコンビニにやってきた。


「履歴書ってどこにありますか?」


「こちらでございます。1個ですか。」


「はい。ありがとうございます。」


「では200円でございます。」


初めてコンビニに寄って買い物をした。分からなかったら人を頼ろうというスタイルは何でもやってもらっていた姫としての特権なのである。

 そして今度は履歴書を書く時が来た。

 何せ今まで一回も働いたことがない。だが、空白にするとまずいというのをスマホで検索し情報として得ていた。

取り合えず、小学校~大学の名前を書いた。


セントラル小学校 

オーシャン中学校

パシフィック高校

アンスティーン大学


そう文字を書いた。勿論、自分の名前性別年齢生年月日は書いた。

そして、資格・PR欄そんなものは知らない。何それ美味しいの?


「よしできた!!」


結局、書いた字だけは達筆中の達筆だが、出来上がった履歴書はバカ丸出しである。一国の品あるお姫様とは思えない。

だが、私はやたら自信満々で、大仕事を終えた感覚だった。

 

「一仕事終えたらお昼ご飯だ!!」


そう大きな声で独り言を言うと、朝用意してもらった栄養たっぷりのお弁当を頬張った。

食べ終わってからは少し面接の練習を妄想の中でやってみようとしたが、どんなことを聞かれるか全く想像できないため考えるのを辞めてお昼寝をした。

起きたら14時40分だった。テッキング株式会社の場所を検索してみた。


「ここからだと電車を乗り継いで合計30分ちょっとか。今から返信するか

~。パワーフォルムへチェ~ンジ!!」


肉体労働の仕事ということで面接でも少しでも筋肉質な人と見られるよう事前に変身した。そして、正装に着替える。

着る事自体は慣れていた。だが、今までは全て着せてもらっていた。

何と無力なのだろうか。私はそれを身をもって痛感したのである。結局鏡を見たりしながらぎこちないながらもネクタイをちゃんと締めYシャツのボタンも締めることができた。

 初めての仕事で初めての面接。ワクワクが止まらないので、家を早く出た。

そして、面接を受けるテッキング株式会社の前に20分以上も早く着いてしまった。


すると、ここで問題が発覚したのだ。履歴書に本人の証明写真を張っていないことに気づいた。歩いていた若いお姉さんに尋ねた。


「今証明写真が必要なんですが、どうすればいいでしょうか?」


「駅に証明写真を撮る機会があるのでそこで撮れますよ。」


「ありがとうございます。命拾いしました。」


お姉さんは、すぐそこに見える鉄筋駅の証明写真撮影所を指し優しく答えてくれた。

では行ってみるとするか。


カーテンがあり開けてみる。

誰もいなかったので、座って音声アナウンスに従って操作した。流石にこのくらい私にもできる。800円という安くないお金を入れた。

そして、撮影が始まる。

真顔でパワーフォルムの範囲内で背筋を伸ばして、カメラに目を向けた。3回撮ってもらった。

どれも同じようだが、一応最後に撮った者が一番きれいに見られると思ったので、それを選択した。


「ご利用ありがとうございました。」とアナウンスがあったあと、すぐに近くのコンビニでボンドを買った。これは、店に入った瞬間見つけたので、聞かなくても済んだ。

急いで証明写真をボンドで所定の位置に張り付けた。 


いよいよ初の仕事の面接である。

 こんなに急いでいるのは勢いを大事にする私にとっとは変な緊張がないのでいいことなのかもしれないと思い、腕時計で時間を確認しながら事務所へ向かった。

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